月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
「歓喜」なのか「奇跡」なのか…誰もが「手のひら返し」で熱狂した喜怒哀楽あふれるW杯グループリーグの報道を読み比べ
posted2022/12/05 11:01
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
BUNGEISHUNJU
サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で日本は2大会連続の決勝トーナメント進出。ではスポーツ紙はグループリーグをどう伝えたか? 紙面には喜怒哀楽が詰まっていたのである。初戦のドイツ戦で爆発し、2戦目のコスタリカ戦で意気消沈。そして運命のスペイン戦……。これだけ短期間で揺れたのはゴールポストだけでなく感情も。読んでいるだけで面白かった。
ドイツに勝利した翌日(11月24日)の一面の見出しを並べてみよう。
『ドーハの歓喜 日本勝った』(日刊スポーツ)
『ドイツに逆転勝ち ドーハの奇跡』(スポーツ報知)
『ドーハの奇跡!!逆転ドイツ倒』(サンケイスポーツ)
『歴史的!!ドイツを逆転2-1 堂安 浅野 弾』(スポーツニッポン)
『浅野 堂安 大金星』(東京中日スポーツ)
『世界に衝撃!!独撃破弾 浅野 ドーハの歓喜』(デイリースポーツ)
「歓喜」なのか「奇跡」なのか
ちなみにドーハの「歓喜」なのか「奇跡」なのか? 一面の見出しでは「ドーハの歓喜」が日刊スポーツとデイリー、「ドーハの奇跡」が報知とサンスポ。サンスポは「奇跡」を採用していたがドイツ戦当日の一面では「悲劇から29年 ドーハの歓喜に変えてくれ!!」。93年の「ドーハの悲劇」とからめて詳しく紹介していた。
作家の万城目学氏は観戦記で「歓喜」を推していた。
《ここは「ドーハの歓喜」と呼ぶべきだろう。なぜなら、決して神頼みの結果ではなく、準備と勇気、そして自らの強靭な意思でもって引き寄せた勝利に、「奇跡」という言葉が醸し出す受け身のニュアンスはふさわしくないからだ。まあ、勝てばどうでもいい話だけれど!》(スポーツ報知11月25日)