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「巨人1位指名・浅野翔吾&西武1位指名・蛭間拓哉だけじゃない」“忘れられた”逸材がいる… 2022年ドラフト目玉候補《外野手ベスト3》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/16 11:03
ドラフト目玉ベスト3 外野手編【3】慶応義塾大・山本晃大外野手(180cm82kg・右投左打・浦和学院高)
外野手編【3】慶応大・山本晃大(180cm82kg・右投左打)
そして、3人目の「見れば見るほど……」の外野手も、蛭間拓哉選手と同じ浦和学院出身の左打ちの外野手だ。
慶応義塾大・山本晃大外野手(180cm82kg・右投左打・浦和学院高)は、蛭間選手と同じ4年生だが、1年浪人して進学しているので、浦和学院高では1年先輩にあたる。
リーグ戦の試合前、シートノックのライトからの返球に、慶應応援席から「オオーッ」という驚きと拍手が起こる。まっすぐにホームベースに伸びる胸のすくようなバックホーム。
試合が始まって、右中間を襲った打球をフェンス体当たりでジャンピング・キャッチ。前にも後ろにも、右中間寄りにもライト線にも、大胆にポジショニングできて、50m6秒そこそこの脚力で、スピーディーな守備ワーク。
腰を水平に回転させながら、打球に強烈なバックスピンがかけられるシュアなバッティング。彼独特のミートポイントとタイミングがあって、目測だが、間違いなく160キロ近いスイングスピード。
今秋リーグ戦でも、9月27日の立教大戦ではサヨナラ3ランをライトスタンドに放り込んで、今季の打ちっぷりだけ見れば、「1年後輩」の早大・蛭間選手すら凌駕したようにも見える。
ならば、そんな逸材がどうしてここまで、ドラフトの話題として、ほとんど活字にならなかったのか。
1番・下山悠介三塁手、2番・朝日晴人遊撃手、3番・広瀬隆太一塁手(3年)、4番・萩尾匡也外野手……プロ志望届を出した選手と来年のドラフト1位候補で上位打線を形成する今年のチームは、慶應義塾史上最強打線ともいわれる充実ぶり。山本晃大外野手は、そのあとの「5番」が打の定位置になっている。
強打者居並ぶ打線の中で、たまたま目立たない存在になっていないか? 以前にも、そんな選手がいたなぁ……と記憶をたどって、アッと思い出した選手がいた。
東北福祉大・金本知憲外野手(広島→阪神)。プロ球界での大活躍を語るのは、今さら蛇足であろう。
金本選手が4年生だった頃の東北福祉大は、齋藤隆投手(横浜1位、現・横浜DeNAコーチ)をはじめ、5人もの選手がドラフト指名されたほどの強豪チーム。何人も強打者が並んだあとに、4番・伊藤博康外野手(巨人4位、現・東日本国際大付昌平高監督)がいて、そのあとを金本選手が打っていた。
他学にいれば、バリバリ4番打者の実力者。それがたまたま強打線の中だから、実力を持っているわりに目立たない。そこが、ドラフトの「盲点」となって、金本選手は広島の「4位指名」になった。
慶應義塾大・山本晃大、打力、走力、守備力、将来性、実戦力……の「総合力」でいえば、早稲田大・蛭間拓哉、中央大・森下翔太に次いで、学生球界No.3の外野手。それが、私の見立てになっている。とりわけ、自分の潜在能力に気づいて、新たな自信を持った時のバッティングの将来性には素晴らしいものがあると見ている。
学生当時はあまり目立たなかったが、プロで使ってみたら……。楽天の4番バッター・島内宏明外野手のような存在になれる可能性を十分秘めた「隠れた実力者」として推しておきたい。
<投手編、捕手編、内野手編から続く>