外野手編【2】早稲田大・蛭間拓哉（176cm87kg・左投左打）

　この秋は、ちょっとしょい込み過ぎだ。打たなきゃ、ランナー返さなきゃ、勝たなきゃ、優勝しなくちゃならない……打線の軸として責任を担うことは大切なことだが、過ぎたるは及ばざるがごとし。あまり意識し過ぎると、心身のバランスを崩して、「結果」が遠のく。

　西武ライオンズが1位指名を公表した早稲田大・蛭間拓哉外野手（176cm87kg・左投左打・浦和学院高）。学生野球最後のシーズンで、初めての試練に直面しているように見える。

ドラフト目玉ベスト3 外野手編【2】蛭間拓哉外野手（176cm87kg・左投左打・浦和学院高）。西武が1位指名を公表している　©Hideki Sugiyama

　浦和学院高では入学してまもなくクリーンアップの一角に抜擢されると、その後は不動の4番打者として君臨。

　大学でも、優勝を懸けた2年秋の早慶戦で、逆転2ランをバックスクリーンにたたき込んだり、ここ一番の勝負度胸抜群のポイントゲッターとして、学生球界を代表するスラッガーと評されている。

「蛭間拓哉」の勝負度胸といえば、思い出すことがある。高校時代のことだ。

　当時の浦和学院・森士監督といえば、厳しい指導で有名な方だったが、試合中でも、ダグアウトから打席の選手に爆声でゲキが飛ぶ。

「私、浦学の4番、20年ぐらい見てますけどね、森さんと勝負してなかったの、蛭間だけです」

　そんなスカウトの証言もあるが、私も同じ場面を何度も見ている。

　前から、背中から、森監督の爆声に見向きもしなかったのは、蛭間選手だけ。それだけ、腹をくくって打席をつとめる覚悟が、すでにして「プロ」だろう。

　中前安打に、意識して一瞬スタートを遅らせ、二塁ランナーに三塁ベースを回らせておいて、ドンピシャのバックホームで刺す……そんなふうに見えてしまうのは、私だけだろうか。

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