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ACL出場を逃し泣き崩れる選手たち…「基礎を残して新築」の2020年鹿島に“足りなかったもの”は? 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byKASHIMA ANTLERS

posted2020/12/23 17:02

ACL出場を逃し泣き崩れる選手たち…「基礎を残して新築」の2020年鹿島に“足りなかったもの”は?<Number Web> photograph by KASHIMA ANTLERS

4位を争うセレッソ大阪を破れば、ACL出場の可能性につながる。4位死守は鹿島にとって、最低限の結果でもあった

 かつてのように新卒選手を育成して、時間をかけて戦力に育てていくという鹿島のモデルは、海外移籍が活発化した現在では、その維持が困難になっている。選手の顔ぶれが激しく変わっていく中では、「勝負強さ」を表現する選手が減り、戦術ファーストというチーム作りが急務だと考えて「新築」を決行したに違いない。

 そういう意味では、今シーズン序盤の苦戦は想定内だったのかもしれない。

ボールを保持することだけが、試合をコントロールする術ではない

 とはいえ、タイトルを獲れなくてもよいというわけではない。そして、ACL出場権を失ってもよいわけでもない。最下位から始まり、5位で終わったとしても、その結果は手痛く、想定外と言うしかない。

 1点差での敗戦は5試合。0-2で敗れた4試合はすべてで80分以降に追加点を許している。終盤の失点で勝ち点を奪う可能性は遠のいた。2位のG大阪との勝ち点差は6ポイント。ドローゲームがあと数試合あれば、と考えてしまう。

 ハイプレスでの体力消耗や高いDFラインを保っていることでの弊害がゲーム終盤に出てしまったのだろうか。攻めに出た結果の失点だったのかもしれない。もちろん、終盤に追いついた試合が4試合。2点差を逆転した試合も3試合ある。

 それでも、そんなふうにシーズンを見てみると、今の鹿島は「試合巧者」とはまだまだ呼べないと思ってしまう。

 ボールを保持することだけが、試合をコントロールする術ではない。かつての鹿島はそれを示してきたチームだと思う。そこにいやらしさがあり、憎らしさがあった。それが「勝負強さ」と評価されてきた。今はまだその老獪さを見せるに至ってはいない。

新人たちが飛躍したシーズンでもあった

 その一方で、若いチームならではの勢いは示せた。沖や上田、そしてルーキーの荒木や松村、染野唯月は大きな期待を寄せられるだけの価値を見せてくれた。ザーゴ監督もシーズンを振り返るコメントのなかで評価している。

「収穫もあった。新人がデビューして能力を示した。彼らの伸びしろを考えれば、クラブとして良い形で育てられている。悪い面ばかりではなく、良い面もあったのではと思う」

【次ページ】 「新時代の王者」として、常に強豪でいられるか?

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