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ACL出場を逃し泣き崩れる選手たち…「基礎を残して新築」の2020年鹿島に“足りなかったもの”は?
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byKASHIMA ANTLERS
posted2020/12/23 17:02
4位を争うセレッソ大阪を破れば、ACL出場の可能性につながる。4位死守は鹿島にとって、最低限の結果でもあった
新しい鹿島とかつての鹿島がうまく融合した“7連勝”
内田篤人が引退した8月23日のガンバ大阪戦を引き分けたあと、FC東京、柏戦で逆転し、8戦負けなしと猛追する。勝利という良薬がチームに自信をもたらしていた。
一方で、ボールを持つということは、それだけミスも大きなものになる。パスがつながらず、相手にボールを渡してしまう悪癖はなかなか消えなかった。そして、監督が描くサッカーを正確に実直に行おうとする選手の姿からは、まるで鎖に繋がれているような息苦しい空気が漂っていた。
しかし、連勝を続ける鹿島では、GKからのロングボールで戦況を変えたり、中央からの崩しもサイドから演出する得点機もあった。新しい鹿島とかつての鹿島がうまく融合していた。
「ゴールや勝利から逆算していくプレーを選択する」
以前、遠藤康が「鹿島の勝利へのこだわり」についてそんなふうに話していたことがある。状況を見極めて、臨機応変に最適なプレーを選ぶ。その感覚はチームの一体感に支えられた。チーム内で共有する絵は、同じ哲学があるからこそ描ける。無駄がない的確なプレーはゴールを生み、勝利につながった。それが鹿島アントラーズらしさだ。
内田が語っていた「足りないもの」
そして、過去の鹿島は常に選手ファーストのチームだったと思う。指揮官は、型を整えたり、選手たちのモチベーションを維持するのに長けたタイプが多かった。もちろん日々、選手のスキルを磨く場も指揮官が用意していたものの、ゲーム上の機微を左右するのは選手自身だった。
ジーコにはじまり、近年では小笠原満男がその中心にいた。
「昔はサッカーを知っている選手がいた。特別、戦術がどうこうというよりも、そういう選手たちがサッカーをやっていた。でも今は、そういう選手が少ないから。型にはまって乗っていくまでは難しいと思う」
2019年シーズン当初に内田篤人はそう話している。彼は時折「今の鹿島には地力がまだない」と口にしていたが、その言葉は今の鹿島には、「基盤となる戦術が必要だ」というふうにも受け取れた。