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ACL出場を逃し泣き崩れる選手たち…「基礎を残して新築」の2020年鹿島に“足りなかったもの”は?
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byKASHIMA ANTLERS
posted2020/12/23 17:02
4位を争うセレッソ大阪を破れば、ACL出場の可能性につながる。4位死守は鹿島にとって、最低限の結果でもあった
涙が止まらない。それは上田だけでなく、鹿島のアカデミー出身GK沖悠哉も同様だった。
悔しさや不甲斐なさ、高ぶる感情をどうしていいのかわからないのは、エースのエヴェラウドも同じだ。試合後に「正直、まだ言葉にするのが難しい」と語っていた。
新監督のもとで“新築”を目指してきた
「数年間はリフォームでやってきたけれど、基礎だけ残して新築する」
鈴木満フットボールダイレクターの言葉のもと、レッドブル・ブラジルでも指揮を執り、欧州でのプレー経験もあるザーゴ監督を招聘した2020年は、2015年以来の5位で終わった。勝利試合数は3位だった昨季と同じだが、11敗と敗戦数は4試合多い。夏の終わりから秋にかけての7連勝で巻き返したが、開幕から4節までは勝利がなく、最下位に沈んだ。
元旦の天皇杯決勝で敗れたこともあり、1月28日の公式戦初戦ACLプレーオフまで、選手全員で練習できたのは10日ほどだった。
「試合の主導権を握りたい」という鈴木の意向に合う指揮官が掲げたのがポゼッション率の高いサッカー。前線からのハイプレスでボールを奪うことはもちろんだが、GKからのビルドアップへのこだわりも強い。
「今までの鹿島のサッカーとはまったく違うもの」とザーゴ自身も語っている。
監督以下スタッフも一新し、4人の新加入選手以外に、2人のブラジル人選手と5人の選手が移籍加入した。ACLプレーオフの先発のうち、6名が加入選手たちだった。しかし、ボールは保持できても得点は奪えず、1点を奪われ、その試合は敗れた。
その後、ルヴァンカップとリーグの開幕戦を落とした状況で、Jリーグは新型コロナウイルスの影響で中断。7月4日に再開したものの、初戦の川崎戦から3連敗。中断期間は鹿島の課題を解決してはくれなかった。
「チームコンセプトやゲームスタイルを変えたので、選手たちに戸惑いがあったと思う。コーチも含めて、両者が慣れるのに時間が必要だった。いいスタートをしようと取り組んでいたところでリーグが中断した。グループ練習しかできず、なかなかチーム作りが進まなかった。夏あたりからいい状態になったが、全員で統一するのには時間がかかった。来年は今年をベースにさらなる上積みをしていきたい」
ザーゴ監督はセレッソ戦後、そうシーズンを振り返った。