詳説日本野球研究BACK NUMBER
選抜は「ミス」と「エラー」が分岐点。
混戦の中で輝いた“プロ好み”の48人。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKYODO
posted2014/04/04 16:30
選抜には38回目となる最多出場で初めての優勝を手にした龍谷大平安。主なOBには衣笠祥雄氏、桧山進次郎氏などがいる。
5失策の駒大苫小牧、野選で散った智弁学園。
さて、先頭打者をエラーで出した履正社はバント安打で一、二塁とし、8番立石哲士がレフトに同点二塁打を放ち、気落ちした伊藤大海は9番永谷をストレートの四球で歩かせ満塁、続く1番打者を投手ゴロに打ち取るが、2番辻心薫にレフトへ犠牲フライを打たれ万事休した。駒大苫小牧には痛恨のエラーになったわけだが、5失策して勝とうというのは虫がよすぎる。守りを整備して夏には上位進出をめざしてほしい。
佐野日大対智弁学園は大会屈指の左腕・田嶋大樹(佐野日大)に対して、1回戦で2本のホームランを放った超高校級スラッガー・岡本和真(智弁学園)がどう挑むのかに焦点が絞られた。結論からいえば田嶋が4打数1安打に抑え判定勝ちしたと言っていいが、第4打席の内野安打は超高校級らしいショート左への強い打球で岡本の評価を高めた。
試合は4回表、智弁学園の2番大西涼太がヒットと右翼手のエラーで二塁に進んだあと盗塁して三塁に進み、捕手のパスボールで生還して1-1の同点に追いつく。その裏には佐野日大がバント処理を焦った三塁手のエラーでチャンスを作り、7、8番打者の長短打で3点奪うというエラーの応酬を展開。6回表にはゴロを捕球した田嶋が一塁へ悪送球をして2-4と、ここでもエラーが得点に結びつく展開が続く。
8回には智弁学園が打者8人を送る猛攻で2点を奪って同点とし、試合は今大会3回目となる延長戦に突入。ここでも勝敗を決したのはミスだった。10回裏、佐野日大は安打と四球で無死一、二塁とし、4番稲葉恒成のバントを一塁手が三塁に送ってこれが野選(フィルダースチョイス)となり満塁。5、6番打者が連続三振したあと7番小泉奎太がレフト前にヒットを打って大会タイ記録となる5度目のサヨナラ勝ちを収めた。
1イニングで2つの暴投、という珍事も。
6試合目のサヨナラ劇は冒頭で紹介した準々決勝の桐生第一対龍谷大平安である。エラー、ミスで勝敗が決したということでは最も印象に残るのがこの試合ではないだろうか。
4-4で延長戦に突入した10回裏、龍谷大平安は4番河合泰聖が内野安打で出塁後、投手の暴投で二進、5番打者がバントで送って1死三塁とすると、桐生第一ベンチは続く2人を歩かせて満塁策をとるが、打者高橋佑八のとき桐生第一のエース山田知輝が暴投を記録、河合が歓喜の生還を果たした。1イニング2つの暴投でサヨナラ劇が演じられるなど、そうそう見られるわけではない。高校野球の怖さを思い知らされた試合である。