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選抜は「ミス」と「エラー」が分岐点。
混戦の中で輝いた“プロ好み”の48人。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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posted2014/04/04 16:30

選抜は「ミス」と「エラー」が分岐点。混戦の中で輝いた“プロ好み”の48人。<Number Web> photograph by KYODO

選抜には38回目となる最多出場で初めての優勝を手にした龍谷大平安。主なOBには衣笠祥雄氏、桧山進次郎氏などがいる。

好ゲームが目白押しだった今大会。

 さて、以上6つのサヨナラ劇を紹介したわけが、今大会はそれ以外にも好ゲームが目白押しだった。私は春夏甲子園大会の出場校がすべて出揃った翌日、日刊スポーツ紙上で“ドラフト目線”の注目選手を文章と表で紹介するコラムを10年以上担当している。表で紹介するのは毎回40~50人で、投打のバランスは20:20くらいになるのだが、この選抜では投手10人:野手31人になった。

 これほどのアンバランスは初めてのことで、スカウトが注目するような“プロ注”の投手が少ないことがわかっていただけると思う。投手ほどではないが、野手も全体にプロ注は少なかったが、注目選手が少ない半面、好ゲームは多かった。サヨナラ劇以外では次の4試合が心に残った。

3/24 関東一(東京) 4-2 美里工(沖縄)(関東一、8回裏に4点取って逆転)
3/29 広島新庄(広島) 1-1 桐生第一(延長15回引き分け翌日再試合)
3/31 佐野日大 7-5 明徳義塾(延長11回、田嶋が投げ抜く)
4/ 1 履正社 12-7 豊川(豊川が8回に5点取って逆転する一幕も)

投手の連投問題と、公立高校の保護。

 これらの大激戦と数々の延長戦を見ながら、投手の連投と複数投手を揃える必要性について考えた。昨年春の選抜準優勝投手・安楽智大(済美)は同大会で5試合に登板、総球数772球を投げ、アメリカの野球関係者からブーイングの集中砲火を浴びた。

 この大会でも広島新庄の山岡就也が延長15回の引き分けと翌日の再試合を合わせて、2日間で304球を投げている。広島新庄と熱戦を繰り広げた桐生第一の山田などは2日間で275球投げ、さらに準々決勝の龍谷大平安戦でもリリーフして67球投げているので3日間で342球投げたことになる。連投の禁止、球数制限の議論が湧き起ってくることは十分考えられる。

 投手の連投の是非はともかく、球数制限が実施されたら有望選手を多く抱える私立高校は対応できると思うが、1人の優れた投手を前面に押し立てて私立に対抗しようとする公立高校は辛いなと思った。公立高校ほどそういうチーム事情で戦っている。

 日本高等学校野球連盟(高野連)はこれまで、特待生の制限や選抜大会での21世紀枠の選考などで公立高校を保護する施策を打ち出してきた。しかし、1人の投手の球数制限や連投禁止は保護してきた公立高校の不利になるので強く押せない。しかし、優れた投手を守るためには球数制限や連投禁止は打ち出したい。「進むも地獄、退くも地獄」という難しい立場に立たされていることは間違いない。成り行きを見守りたいと思う。

【次ページ】 48人の「プロ好み」する注目選手たちとは?

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