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過去5年のドラフト戦略にみる傾向。
高校生と野手を獲る球団は……強い!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/01/25 10:31
2011年10月のドラフト会議で、東洋大のエース・藤岡貴裕の交渉権を獲得しガッツポーズするロッテの西村徳文監督(左)。
'05~'07年までの3年間、高校生を対象にしたドラフトと大学生・社会人などを対象にしたドラフトは別々に行なわれていた。いわゆる「分離ドラフト」である。
高校生を指名して獲得することは大きなリスクを伴うが、成功すれば大きな実りをもたらす。'00~'04年の5年間、成功と言ってもいい成績を残した選手は「大学・社会人など」の45人に対して、「高校生」は20人と少ない。しかし、その顔ぶれは内川聖一(ソフトバンク)、中島裕之(米国ジャイアンツ)、中村剛也、涌井秀章(ともに西武)、西岡剛(阪神)、成瀬善久(ロッテ)、ダルビッシュ有(レンジャーズ)とタイトルホルダーがずらりと並ぶ。いわば、リスクを冒して高校生を上位(1、2位)で指名することは、その球団の覚悟を計る物差しになっていた。しかし、分離ドラフトはそういう覚悟なしで高校生を指名できるチャンスを全球団に与えてしまった。
分離ドラフト廃止で鮮明になった各球団の問題点とは?
'05年柳田将利(青森山田→ロッテ)、'05年荒川雄太(日大高→ソフトバンク)、'06年延江大輔(瀬戸内→オリックス)、'07年丹羽将弥(岐阜城北→オリックス)、'07年寺田龍平(札幌南→楽天)
以上の5人は'05~'07年の高校生ドラフト1巡目で指名されながら、すでに球界から姿を消している選手である。球団に目を向ければ荒川を指名したソフトバンク以外、ロッテ、オリックス、楽天と、高校生の育成に苦労している球団の名前が並ぶ。もしこの3年間、分離ドラフトで行なわれていなかったなら、それらの球団は高校生を上位で指名しただろうか、私は疑問である。
その年の1巡選手が2人存在するため、指名順位別の傾向を見ることができないなど、ドラフトを分析する者の不興を買った分離ドラフトが廃止されたのは'08年。それ以降、高校生、大学生、社会人を同時に指名する統一ドラフトに改められたことにより、各球団の方向性が鮮明になった。
私がドラフトで重視するのは「高校生と大学・社会人のバランス」、さらに「投手と野手のバランス」である。'08~'12年の過去5年間を振り返り、各球団の問題点をあぶり出していこう。