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「メッシはなぜ相手を抜けるのか?」中村憲剛が明かす驚愕の体験“メッシの股抜き”とは…「一瞬何が起きたのか分かりませんでした」
text by

中村憲剛Kengo Nakamura
photograph byKiichi Matsumoto / JMPA
posted2024/12/10 17:08

メッシはなぜ、いとも簡単に相手を抜けるのか?この命題について、中村憲剛が自らの体験もまじえて解説する
22年のワールドカップ・カタール大会準決勝のクロアチア戦で、メッシは1ゴール1アシストを記録しました。 分のアシストは、クロアチアのヨシュコ・グヴァルディオルとの1対1を制したことで生まれました。当時 歳にして高い評価を集め、現在はマンチェスター・シティの一員となった屈強なセンターバックを、ものの見事に翻弄したのです。
ちなみのこのアシストは、右足で出しています。彼は時折、右足を使う。これもまた、対峙する選手からすると厄介です。
「メッシの股抜き」を体感
メッシの一挙手一投足は、あらゆる角度から分析されている。なぜ彼は、それでも相手を抜けるのか。自分がボールを持った1対1に、圧倒的なまでに強いのか。
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その理由の一端に、触れたことがあります。
2010年10月に埼玉スタジアムで行なわれた日本代表対アルゼンチン代表の一戦で、僕は後半途中から出場しました。メッシがドリブルで日本の陣内に入ってきたところ、ドリブルが少し大きくなりました。「よし、取れる」と思って食いついた瞬間ーー。
股抜きをされていました。小さい頃から股抜きをすることはあっても、されたことはほとんどなかっただけに、一瞬何が起きたのか分かりませんでした。
この時に、「対戦する選手たちはメッシのやることがある程度予測がつくのに、なぜ対応できないのか」という問いの答えを、身をもって体感したのです。
メッシは身長169センチで、ストライドは大きくないので、一歩で距離を稼げる タイプではありません。考えられるのは、ドリブルが少し大きくなった後の尋常ではない足の運びの速さです。それまで僕が体感したことのない速さで間合いを詰めて、僕の股間へボールを通したのだと想像します。
自分と対峙する相手選手が「左足でプレーできる方向へ持ち出す」と予測していることを、メッシは分かっている。だからこそ、餌を撒いて相手に足を出させた後に尋常じゃない速さで股を通したり、切り返したりする。それができるから簡単にボールを失わない。右利きに比べると少し身体から遠くにボールを置くといった工夫もしている。自分が体感したことで、より深く理解することができました。
<続く>

