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メッシ35歳は“DFがバタバタと倒れていくドリブル”をどう極めたか…風間八宏「確信を持ってやっています」“運ぶ能力”の本質とは

posted2023/02/22 10:00

 
メッシ35歳は“DFがバタバタと倒れていくドリブル”をどう極めたか…風間八宏「確信を持ってやっています」“運ぶ能力”の本質とは<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

PSGジャパンツアー時のメッシ。“分かっていても止められない”ドリブルの運び方の真髄とは?

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風間八宏

風間八宏Yahiro Kazama

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Takuya Sugiyama

 カタールW杯でついに優勝を遂げたリオネル・メッシ。35歳の今もなおサッカー界の頂点の1人として君臨できる理由、分かっていても止められないドリブルをなぜできるのか。『サッカー止める蹴る解剖図鑑』(エクスナレッジ社)での風間八宏氏のメッシのプレー解析を一部転載します(全2回の2回目/#1も)

 

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――メッシの特徴として、ドリブルでボールが足下から離れないということがあります。右からカットインして、シュートフェイントというか、シュートする雰囲気を出すだけで、次々とDFを外していくシーンをよく見ますが、そのときもやはりボールが離れない。

風間 天皇杯の決勝で、名古屋グランパスのストイコビッチがカットインしながら何人も外してシュートを決めたことがあるのですが、あれでもけっこうボールは足下から離れています。まあ、メッシに比べるとですけど。蹴る動作というのは、進むのとは反対方向へ力が働きます。腕を広げて、軸足を踏み込んで、体をそらしてという動作で蹴るフェイントを入れると、体が止まります。その間にボールは動いていますから、どうしてもボールとの間の距離が広がります。

タッチの間隔も速く、運ぶのも速いので置いていかれる

――普通は蹴る動作をすると体が止まるけれども、メッシの場合はそうでない。

風間 蹴る動作そのものが違うからでしょう。普通は背中を使って体をそらして蹴りますが、メッシはほぼドリブルの前傾姿勢のまま足を振ることができる。

――普通は相反する動作になるはずの「運ぶ」と「蹴る」が一体化しているのですね。

風間 ほぼ走る歩幅のままシュートしていますよね。ドリブルのタッチ数が多いのも、DFが引っかかってしまう理由です。

――キックフェイントというより、歩幅を少し変えているだけなのですが、それだけでDFがバタバタ倒れていく。なんか歩幅のテンポが合っていない感じがします。

風間 タッチが多い。DFはその都度反応しなければならないので、どうしてもノッキングしてしまいます。そしてメッシのタッチの間隔も速く、運ぶのも速いので置いていかれてしまいますね。

――トレーニングすればメッシのようにできるのでしょうか。

風間 あれほど自然にできるようにはならないでしょうけど、意識すれば変わると思います。メッシは足の前側の筋肉にあまり力が入っていないように見えます。前側の筋肉は進むのではなく止まるために働くことが多い。キックフェイントのときに、前側の筋肉を使って体を止めてしまうからボールが離れるわけで、なるべく後ろ側の筋肉だけを使って走ればボールに遅れなくなります。

進行がブレないタッチの正確さ

――ボールが足下から離れないのと同時に、左右のブレも少ないですね。

【次ページ】 子供のときのままというのが一流の証拠ですよ

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