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「負けた言い訳に聞こえるかな」青学大・原晋監督が明かす“幻の区間プラン”…なぜ3位に終わった?「3日前、エース近藤が相談にきました」 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byYuki Suenaga

posted2023/01/03 20:40

「負けた言い訳に聞こえるかな」青学大・原晋監督が明かす“幻の区間プラン”…なぜ3位に終わった?「3日前、エース近藤が相談にきました」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

3位でゴールする青学大10区の中倉啓敦(4年)。昨年の王者はなぜ3位に終わったのか?

「もう、やめて下さいよ、その話(笑)。ちょっと、いや、だいぶ恥ずかしいんで。なんていうか、気持ちが弱くなっちゃったんですよね。少しの間だけ」

 本当に少しの間だけだったらしい。3区を走った副将の横田俊吾(4年)もこう証言する。

「近藤が弱気になってるという話を聞いて、お前は大丈夫に決まってるじゃないかと。もう、自分たちとしては励ますしかないですよ。そうしたら、翌日の練習ではまったく普通、というかいつも通り、俺たちのエース近藤に戻ってました」

なぜ5区の若林は当日変更になったか?

 近藤、岸本という二枚看板が弱気になった瞬間があった――。そう聞いて、改めて箱根駅伝で優勝を狙うことの難しさを感じた。

 彼らは1年生の時から表現力が豊かで、いつも目の前の難敵に対して、ポジティブに立ち向かっていた。そして実際、1年生の時と3年生の時の2回、箱根駅伝で総合優勝している。

 やはり、4年生になると、重圧の種類が変わるのだろうか。今回の青山学院の箱根駅伝を振り返るとしたら、「動揺」という言葉が思い浮かぶ。

 厄介なことに、動揺は伝染しやすい。

 近藤、岸本は立ち直ったが、5区山上りに予定されていた若林宏樹(2年)が元日、レース前日になって体調不良を監督に訴えてきた。原監督は言う。

「走れないことはない気がしたんだけど……。山は気持ちが大事だからね。弱気になっていると、それがタイムにダイレクトに反映されます。そこで、他の選手の方がいいかなということで、当日変更ということになりました」

 5区を走った脇田幸太朗(4年)は区間9位と代役としては手堅くまとめたが、首位駒澤との差は2分3秒と開いた。

 その余波はレースの復路でも続く。

 6区の西川魁星(4年)が区間20位のブレーキで順位を下げると、7区の佐藤一世(3年)、8区の田中悠登(2年)も前との差を縮められない。原監督は負の連鎖を悔やむ。

「佐藤、田中、彼らには動揺があったと思います。想定していた順位とは違うし、ウォーミングアップをしたあとに、ちょっと時間が空いてしまうからね。歯車が狂い始めてしまうと立て直すのは難しい。9区になってようやく、岸本が立て直してくれました」

 岸本は5人抜きで3位に順位を押し上げ、青山学院のプライドを保った。地力がなければ、そのまま沈んでいたとしてもおかしくなかった。

「なんだか…負けた言い訳に聞こえちゃうかな」

 青山学院の選手たちが感じたプレッシャーの源泉には、なにがあったのか? 連覇への重圧なのか、ライバル駒大の強さか。それは複合的な要素だろうが、こうした気持ちの“圧”は、今まで経験したことのない類のものだったと原監督は認める。

【次ページ】 「なんだか…負けた言い訳に聞こえちゃうかな」

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