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批判を浴びた“最悪のスタート”からW杯へ… 森保ジャパンが蘇生した転換点とは? 成長力でオーストラリアの「ホーム不敗神話」も凌駕 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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posted2022/03/25 17:05

批判を浴びた“最悪のスタート”からW杯へ… 森保ジャパンが蘇生した転換点とは? 成長力でオーストラリアの「ホーム不敗神話」も凌駕<Number Web> photograph by Getty Images

3月24日にアウェイで行われたW杯アジア最終予選のオーストラリア戦。84分に投入された三笘薫の2ゴールが、7大会連続のW杯出場を決定づけた

森保監督が上田ではなく浅野を先発させた意図

 森保監督が上田ではなく浅野を先発させたのは、オーストラリアに多少なりとも押し込まれる想定に立っていたからに違いない。浅野のスピードを生かしてカウンターを浴びせる狙いがあったはずだが、前線へパスを入れるタイミングを意図的に遅らせた後半は、浅野がDFラインの背後を取る回数が減っていた。試合の流れを相手に渡さないためにも、60分過ぎでの選手交代は合理的である。フレッシュな選手を入れることでチームを活性化でき、高さのある中山と上田は、攻守両面のリスタートを強化することもできる。

 残り時間が徐々に少なくなっていくなかで、森保監督が再び動いたのは84分だ。南野と田中碧を下げ、三笘薫と原口元気を送り出す。ここでまたフレッシュな選手を入れることでロングボールの出どころに圧力をかけ、マイボールを確実に循環させていく狙いが読み取れた。

 0対0のまま試合を終わらせることができれば、日本はこの試合で求められていた最低限のタスクを果たすことができる。勝ち点1でも悪くはない。

 ここで日本がゴールをもぎ取る。山根視来と守田英正のコンビネーションで右サイドを崩し、ゴール前へ飛び込んできた三笘が決め切った。

 川崎フロンターレ所属の山根にとって、ヨーロッパでプレーする守田と三笘はかつてのチームメイトだ。クラブで培われた連携を代表で生かすのは効率的で、短い準備期間のなかでは大きな価値を持つ。彼ら3人が同時にピッチに立っていたのは、森保監督の采配の妙と言っていいはずだ。

オーストラリアの心は先制点で折れていた

 この時点で日本の勝利は決まっていた。後半のアディショナルタイムは4分あり、オーストラリアのグラハム・アーノルド監督はすぐにFWの選手を起用したが、ホームチームのベンチは静まり返っている。テクニカルエリアに飛び出して、ピッチに立つ選手を鼓舞する控えメンバーもいない。彼らの心の芯は、すでに折れていた。

 90+4分の三笘の2点目は、彼にしか決められないゴールだ。川崎フロンターレ在籍当時から見せてきた得意のパターンで、文字どおりオーストラリアの息の根を止めてみせた。

 ゲームの最終盤にふたつのゴールを奪い取り、W杯予選突破を決める。日本の勝利を予想することはできても、かくもドラマティックな展開は、我々の想像を超えるものだった。

【次ページ】 追い詰められた日本を蘇生させた「4-3-3」

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