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MGCは日本マラソンの何を変えたか。
瀬古利彦が語る影響、箱根との関係。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2020/05/05 11:50
MGCファイナルチャレンジ最後の名古屋ウィメンズマラソンでオリンピック行きを決めた一山麻緒。
日本人のマラソン選手はピークが早い。
――瀬古さんは、学生時代からマラソンを意識していた方がいいという考えですか。
「学生のうちから長い距離に慣れて、大学を卒業してすぐ22?24歳の時期にしっかりマラソンの練習ができる準備をしておかないといけないと思っています。
マラソンを走る選手のピークは24歳から28歳ぐらいなんですよ。特に日本人は、中学や高校からがっつり陸上やっているので海外の選手と比べてピーク時期も早くくる。ケニアでは本格的に陸上を始めるのは、18歳以降の選手が多くて、だからピークが遅いんですよ。
日本は陸上をする環境が出来ているんで仕方ないですが、早く来るピークの時にちゃんと活躍するためには学生時代の取り組みが非常に重要です」
「スターの存在は大きいよ」
MGC最大の成果が日本マラソンのレベルアップだとすれば、副次効果はスター選手がうまれたことだろう。日本記録保持者の大迫傑を始め、MGCでスタートから飛び出してライバルや視聴者の度肝を抜いた設楽悠太、女子では名古屋ウィメンズで風雨の中で美しいフォームで激走した一山麻緒らが、往年の瀬古、高橋尚子、野口みずきらにつづくマラソン界の顔になりつつある。
――短距離界は「顔」がたくさんいますが、マラソン界にもようやくスター性のある選手が出てきました。
「スターの存在は大きいよ。どんなスポーツもスター選手がいないとなかなか広がらないし、みんなでスター選手を作っていかないといけない。
例えば大迫選手と設楽選手は両極端で、キャラも違うからおもしろい。特に大迫選手はスター性がある。設楽選手は今回マラソンの代表選手にはなれなかったけど、力はあるからね。欲を言えば東京マラソンで大迫選手と競り合ってほしかったなぁ。
私の見立てでは、設楽選手は大事な試合の前にレースに出過ぎたかもしれないと思う。特に2月の熊本城マラソンでの30キロレースは全力で走っていたのが気になった。これからはひとつひとつのレースを大事にして走ってほしいね」