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MGCは日本マラソンの何を変えたか。
瀬古利彦が語る影響、箱根との関係。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2020/05/05 11:50
MGCファイナルチャレンジ最後の名古屋ウィメンズマラソンでオリンピック行きを決めた一山麻緒。
大迫の独自の活動を応援。
――大迫はレースの開催など、陸上選手育成のための独自の取り組みを始めています。こういうのは初めてだと思うのですが、現役選手がレースを作る土壌はそれまでなかったのですか。
「やっちゃいけない感じだったよね。現役の選手は、大会を開いたりすると忙しくなって走れないだろうと……。ある意味、余計なことだったんですよ。
そういう中で、大迫選手はプロだし、28歳という年齢を考えて今後のことを考えるようになったと思うんです。若い人が新しい取り組みを見せることは悪いことじゃない。マスコミにマラソンが取り上げられて、注目してもらえるといいし、我々も負けないようにやっていきたいですね」
大迫が学生や若い人たちにチャンスを与える意味でレースを開催したり、ケニアで強化育成拠点を作ろうと考えているのは、自身の力を踏まえつつ、世界との距離があまりにも離れており、これからは世界と戦える選手を輩出していきたいという思いがあるからだろう。
実際、マラソンの世界記録はエリウド・キプチョゲ(ケニア)の2時間1分39秒だ。勝負はやってみないと分からないとはいえ、現実の世界は絶望的に遠い。
メダルについて現実的な可能性は?
――東京五輪まで1年ありますが、メダル獲得の可能性について瀬古さんは、どう考えていますか。
「うーんハッキリ言ってしまえば、男子は世界との差があり過ぎて、常識的に考えるとメダルを獲るのは難しいと思います。メダルが取れたら嬉しいけど現実的には入賞を目指していく。そのためには、30キロからのペースアップにどれだけ耐えられるかでしょう。そういう練習を1年続けていかないといけない。
女子は、男子よりも可能性があります。ブリジット・コスゲイ(ケニア)が2時間14分04秒で1人だけ抜けているけど、あとの選手は17分、18分台ですからね。一山選手は、そのくらいの力は十分に持っているし、前田選手もMGCでの走りを本番でもできたら十分にいけるんじゃないかなって思っています」