One story of the fieldBACK NUMBER
稲葉ジャパンが作った「右足の掟」。
いつもより1歩リードを広げた理由。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKyodo News
posted2017/11/21 11:30
優勝を決めて、ナインを出迎える稲葉監督。大会前に「まず勝利が大事」と語っていた通り、見事に代表監督の初陣を飾った。
12球団あれば12通りの「掟」が存在するプロ野球。
まだWBCという大会ができたばかりの頃、すべて手探りの中、日本代表では、あるベテラン選手がこう提案したという。
「所属している各チームで細かなプレーのやり方に違いがある。だから代表チームだけの決まり事をつくろう」
野球という1つのスポーツにおいても、12球団あれば12通りの「掟」が存在する。大会前に集まり、終われば解散の繰り返しとなる代表チームにおいては、いつ、誰が来ても理解しあえる“共通言語”が必要だと先人は考えたのである。
それは例えば「送りバントをする時はあらかじめ構えた上でやる」という類の、原理原則だったという。
あの「グリーンライト」からさらに先へ進む必要が。
そして、現監督の稲葉は選手、コーチとして3回のWBC、1回の五輪を経験してきた。
また、井端は2013年、「グリーンライト(=行けたら行け)」によって準決勝で敗北し、優勝を逃した第3回大会の主役であり、悲劇のシーンの当事者でもあった。
行き当たりばったりの選手頼みではなく、どんな選手が集まっても不変の共通認識が必要であることは、指揮官もコーチ陣も身をもって知っているのである。
「詳しくは言えないけど、そういう決まり事というのは2つ、3つあるよ。でも、それを決めて終わりじゃなくて、これから課題を挙げていく段階だから。グリーンライトだって、どの程度の確証があれば行っていいのか。行けたら行けなのか、絶対にセーフなら行け、なのか」
井端は個々の判断に委ねる「グリーンライト」から前進する必要があると説いた。単なる“青信号”ではなく、情報を反映できる“可変式信号機”へと精度を上げていく。そういう作業に稲葉ジャパンのスタッフは着手し始めている。