One story of the fieldBACK NUMBER
稲葉ジャパンが作った「右足の掟」。
いつもより1歩リードを広げた理由。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKyodo News
posted2017/11/21 11:30
優勝を決めて、ナインを出迎える稲葉監督。大会前に「まず勝利が大事」と語っていた通り、見事に代表監督の初陣を飾った。
足で重圧をかけ、韓国投手陣に速球系を投げさせた。
「日本の投手のようなクイックや牽制があるわけじゃないから。プレッシャーをかければ投手はああなるよ。走らなくても行くぞ、行くぞという重圧をみんながかけてくれた」
試合の後、ニヤリと笑ったのは一塁ベースコーチを務めた井端弘和だった。
5回も、6回もともに一塁に松本剛(日本ハム)をおいた場面で、3番近藤健介(同)がヒットを打ってチャンスを拡大したのだが、松本は牽制を4球もらっている。そして近藤はともにストレート系の球を叩いた。
つまり、足で重圧をかけ、走られたくない韓国投手陣が速球系を投げざるを得なくなったところを仕留めた。
打のつながりは必然だったということだ。
「いつもより1歩余分にリードを取れ」
井端の言葉を裏付けるのは走者のリードの幅だった。
この試合、ジャパンの選手たちはアンツーカー(ベース周囲の赤褐色の土)から右足が出るまでリードを取った。
それぞれの球場でアンツーカーの広さは異なるが、東京ドームの場合、そうするためには一塁からおよそ4歩離れなければならない。当然、牽制で刺されるリスクも伴う。特筆すべきは、それが松本や西川龍馬や上林誠知のような俊足ランナーだけでなく、捕手の甲斐拓也や近藤でさえ、同じだったということだ。
この試合、ジャパンのベンチからは選手に、こんな指示があったという。
「いつもより1歩余分にリードを取れ」――。
つまり、各選手が実践したそれはチームを貫く「掟」だったのである。