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“日本らしさ”か“アジア最強”か?
ACL敗退が続くJリーグ勢の実状とは。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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posted2013/05/09 10:31

“日本らしさ”か“アジア最強”か?ACL敗退が続くJリーグ勢の実状とは。<Number Web> photograph by Getty Images

アウェイの地で北京国安に2-1で負けた時の広島。昨季のJ王者は、6試合で0勝3分3敗とし、ACLグループリーグで姿を消した。

躍進する中国、タイ勢と対照的なJリーグ勢の低迷ぶり。

 豊富な資金力を支えにマルチェロ・リッピを指揮官に迎え、パラグアイ代表FWルーカス・バリオスらの外国人を擁する広州恒大は、ベスト8に食い込んだ昨年の経験を土台としている。サンフレッチェ広島と同じグループで2位を確保した北京国安は、現行の大会フォーマットで4度目の挑戦を2010年以来となる2度目の16強入りへつなげた。

 最終節で2位に滑り込んだブリーラム・ユナイテッド(タイ)も、2年連続の出場である。昨年のACLで柏と広州恒大から勝利を奪った実績が、現行の大会フォーマットで同国史上初のベスト16進出へ生かされたのは間違いない。

 ひるがえって日本勢はどうか。2年連続出場は柏だけだ。ネルシーニョ監督率いるこのチームが、Jリーグ勢の全滅を阻止したのは示唆に富む。

 どのチームもACLを目ざすのはいい。だが、どのチームもベスト16を最低限のノルマにできるほど、ACLは安易な舞台ではない。Jリーグ勢の優位性は急速に薄らいでいるのが実情なのである。

弱体化は「日本らしいサッカー」へのこだわりが原因?

 より根本的な理由を探ると、日本らしいサッカーへのこだわりが足かせとなっている気がしてならない。

 '07年にACLを制した浦和は、闘莉王、小野伸二、坪井慶介、長谷部誠、阿部勇樹、鈴木啓太、田中達也ら新旧の日本代表をズラリと揃えていた。ロブソン・ポンテとワシントンのブラジル人も、ハイクオリティなタレントである。

 ただ、ホルガー・オジェック率いるこのチームは、日本サッカーが目ざすべき方向を映し出していたわけではない。絶対的な司令塔のポンテを中心とした、きわめて現実的なサッカーを展開していた。

 翌'08年にJリーグ勢の連覇を達成したガンバは、西野朗監督(当時)のもとで攻撃的なサッカーを標榜した。12試合無敗で大会を乗り切り、アウェイで全勝した足跡は見事である。ボールを保持するだけでなく、フィニッシュへつながるポゼッションを意識したサッカーもまた印象深い。

 それでも、ACL、J1リーグ、ナビスコカップ、天皇杯との並行日程を考慮し、西野監督が「ときには内容より勝負に徹するゲームが出てくるかもしれない」という決意を胸に秘めていたのも事実である。

【次ページ】 Jリーグ勢に欠けているのは勝利に対する貪欲さだ。

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