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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
他球団は「東海大を敵に回せない」“巨人縛り”の菅野智之を日ハム「強行指名」のウラ話…オリオールズ移籍で思い出す“2011ドラフト狂騒曲”
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安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/27 12:01

巨人入りを熱望していた菅野智之(東海大)だったが2011年のドラフトで日ハムが強行指名し、津田敏一球団社長がくじを当てた。左は巨人の清武英利代表
翌年、女房役だった伏見捕手の取材にうかがった東海大グラウンド。
外野のフェンス沿いに、ひとり黙々とランニングを続ける菅野投手の姿があった。
「その節は、ありがとうございました。はい、元気にやっています!」
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わざわざ挨拶に来てくれた菅野投手の笑顔が、去年よりおだやかになったように見えて、来年から大丈夫かな……といらぬ心配までしてしまったものだ。
「あいつ、今でもこの中(現役選手たち)でいちばん練習していますよ。量もそうだけど、自分の身になる練習を自分で考えてやっています。辛い立場にあるのにね。他の選手も見習ってほしいです。しかも、選手たちの練習の邪魔にならないように。そういう気遣いもできる男です。本当に頭が下がります」
首都大学野球リーグ7連覇、歴戦の横井人輝監督(当時)の菅野投手を見つめる目が潤んでいるようにも見えた。
36歳でのメジャー挑戦の行方は…?
このオフ12月、菅野智之投手は、12年働いて136勝を挙げた読売ジャイアンツを巣立ち、ボルチモア・オリオールズへ移籍することを決めた。
「誰も想像しなかった15勝3敗」
そんな感想を述べる人もいたが、今年の菅野智之は凄かった。
両サイドに速球、変化球をビシビシきめる無双のコントロールに、勝負どころで打者を圧倒する猛烈なバックスピン。打者がのけぞるように空振りの三振に切ってとられる場面を、何度も見た。
それ以上に見事だったのが、スプリットの精度だ。
打者が打ちたくなるような軌道から、見計らったようにスイングが始まってからキュッと沈んで、決してジャストミートを許さなかった。マウンドに立つ菅野投手が、「手品師」のようにすら見えていた。
行く人、来る人。
プロ野球のオフとは、そうした季節だ。
スッキリした表情で、菅野智之投手、自信満々の入団会見。すべて正味。強がりやハッタリはかけらも感じられなかった。
これまで地道に、時間と知恵を尽くして増やしてきた無数の「引き出し」を武器に、来季は36歳になる菅野智之がメジャーリーグに挑戦する。
行ってらっしゃい! そして、好漢・菅野智之のこの先に、どうか幸あれ。
<つづき「大学時代編」を読む>
