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「不可解判定で退場」「なんで伊野波があそこに?」長谷部誠の心も乱れた“2011年アジアカップの大事件”「日韓戦の勝敗を分けたのは…」
posted2024/01/22 17:11
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama
嵐のような2011年大会…「不可解判定」での退場も
前触れもなく嫌な種類のスリルに襲われ、嵐に巻き込まれるような体験をする。アジアカップとはそんな大会である。「W杯とは別もの」という本田圭佑の肌触りは、多くの人の共感を得るだろう。
安心して観ることができたのは、2000年大会ぐらいだ。フィリップ・トルシエのもとで名波浩らが輝いたチームは、長きにわたって「大会史上最強」と謳われた。
ザックことアルベルト・ザッケローニのもとで大会史上最多となる4度目の優勝をつかんだ11年大会も、初戦からハラハラドキドキの展開となる。04年の準々決勝以来の対戦となるヨルダンに、1点をリードされたまま後半アディショナルタイムへ突入する。吉田麻也のヘディングシュートが決まらなければ、黒星スタートになるところだった。
シリアとの第2戦もクロスゲームとなった。35分に長谷部誠のゴールで先制するが、畳みかけるような攻撃が見られない。「多くの選手は1カ月ほど試合から遠ざかっていて、コンディションがバラバラ」とザックが話していたように、ゲームのテンポがいまひとつ上がらないのだ。
どちらも好機をつかめないまま迎えた72分、不可解なジャッジを下される。ペナルティエリア内で相手FWと交錯したGK川島永嗣に、レッドカードが提示されるのだ。ふたりが接触する前に、副審は旗を上げていた。オフサイドがあったのは明らかなのに、イラン人主審は判定を変えない。単なる誤審ではなく、明確な意図を持った作為と言っていいものだった。
川島の退場と同時にPKを献上することになり、日本は1対1の同点に追いつかれてしまう。しかし82分、岡崎慎司の突進がPKを誘う。本田が決めて勝ち越した。最終盤にシリアの選手も退場にした主審は、その後、新たな割り当てを受けずに大会を終えている。
続くサウジアラビア戦は、岡崎がハットトリックを決めるなどして5対0で大勝した。2勝1分のグループ首位で、日本はベスト8行きを決めた。