- #1
- #2
箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「箱根駅伝の8割はリクルーティングで決まる」古豪チームのスカウトが語る《選手争奪戦のリアル》「いまは“資金援助”か“大学ブランド”がないと…」
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph byYuki Suenaga
posted2024/01/03 11:00
90年代~00年代に箱根路の常連だった“古豪”関東学院大。チームで13年前からスカウトを務める上野敬裕さんに昨今のリクルート事情を聞いた
また、実は大切なのはその選手が「良い走り」をした後よりも「失敗してしまった時」だという。仮に失敗レースをしたとしても、その才能を信じていることを伝えることで、多くの候補の中から選んでもらえるケースも増えるという。
「前述のように、いまは一度でもタイムを出せば多くの大学から声がかかる時代です。でも、裏を返せばケガや不調で記録が出なくなれば、波が引くようにいなくなってしまう。記録を持つ選手には片っ端から声をかけている大学もあるのは事実ですから。
だからこそウチのような非強豪校は、一度声をかけた以上は基本的に最後まで面倒をみます。大袈裟かもしれませんが、高校生の人生を預かるわけですから、そこは覚悟を持って声をかけるようにしています。早い段階で内定した選手が、その後、故障やアクシデントに見舞われるケースも、時にしてあります。入学早々、手術をしなくてはいけない選手もいましたが、じっくり長い目で育成していくというのが、基本方針なので、その辺りの対応は、手厚いと思いますね」
記録だけを見て声をかける大学も…?
上野さんが印象に残っている、ある出来事がある。
「ある地方大会で5000mのベストタイムが15分台の子が、突然、大活躍したんです。たまたま見に来ていたスカウトは地元の大学と私だけ。ところが翌日高校に電話をしたら、『昨日の大会での走りを見て……』と多くの大学から連絡があったそうなんです。
いまはインターネットで小さな大会でも結果やタイムはすぐに見ることができる。おそらくそれを見て記録だけで声をかけているんですよね。それが一概に悪いことだとは思いませんが、『こちらは結果だけでなく、ちゃんと走りを見ていて、最後までしっかり手厚くケアするよ』ということを示すことが大事だと思っています」