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岡田彰布監督が不機嫌に「いらんこと言うたらアカン」アレはオリックス時代に始まった…「“Vやねん”事件も」阪神ファンのトラウマ“まさかの失速”4選
posted2023/11/04 17:40
text by
近藤正高Masataka Kondo
photograph by
Sankei Shimbun
今年流行語になった岡田彰布監督の「アレ」。じつはオリックス時代に使い始めた「アレ」がなぜ阪神で流行ったのか? ここでは、阪神ファンがトラウマになった“まさかの失速”4選をたどっていく。初回は2021年編。【全4回の1回目/#2、#3、#4へ】
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岡田彰布「こんなんやったら優勝でけへんぞ」
今シーズン(2023年)、セ・リーグを制覇した阪神タイガースの岡田彰布監督が一貫して「優勝」の一言を封印し、「アレ」と言い続けたのは周知のとおりである。「アレ(A.R.E.)」は今年のユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされるなか、阪神はオリックス・バファローズとの日本シリーズで3勝とし、いよいよ38年ぶり2度目の「アレ」に王手をかけた。
じつは岡田監督はオリックスの監督時代にも「優勝」の語を封印していた。当時、産経新聞大阪本社運動部のオリックス番記者だった喜瀬雅則(現・スポーツライター)によれば、それは岡田監督就任1年目の2010年のセ・パ交流戦前のこと。ちょうど投打がかみ合い出した頃に借金「6」で交流戦に入り、ここで優勝すれば貯金生活も見えてくる。そこで番記者たちは話を「優勝」へと向けたのだが、岡田は一向に乗ってくれず、「言うたら、おかしなことになるんよ。いらんこと言うたらアカン」と釘まで刺したという(「文春オンライン」2023年9月14日配信、出典は喜瀬雅則『阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?』光文社新書)。
その理由として、岡田が挙げたのが、阪神の第1期監督時代の2008年の交流戦でソフトバンクと優勝争いをしながら、最終戦で逃したことだった。このとき、ミーティングでコーチが選手たちに「おまえら、こんなんやったら優勝でけへんぞ」と檄を飛ばしてからというもの、だめになってしまったというのだ(ただし、1位のソフトバンクとは勝率で並んでおり、前年の交流戦順位により阪神が2位となったにすぎなかったのだが)。
この苦い経験から、岡田オリックスでは「優勝」が禁句となり、会話では「アレ」とボカされるようになったという。そのかいあってか、2010年の交流戦では優勝を果たす。これを祝して球団のつくったTシャツの左胸にも「アレしてもうた」というロゴがプリントされていたとか。
阪神「失速の歴史」
岡田はオリックス監督時代から「アレ」を使っていたとはいえ、一般には浸透はしなかった。それが阪神監督に復帰して迎えた今シーズンは、ファンのあいだでも「アレ」が共有され、流行語となった。そこには、球団の歴史も深くかかわっているのだろう。それというのも、阪神タイガースという球団は、これまでに優勝にあと一歩まで手が届きながら逃すということを繰り返してきたからだ。
記憶に新しいところでは一昨年、2021年がそうだった。矢野燿大監督の3年目のこのシーズン、阪神は広島と五分だった以外は、セリーグの他4球団に勝ち越しながらも、前年まで2年連続最下位のヤクルトに優勝を許した。