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「姫野のジャッカルは4年前と大きく違う」姫野和樹の“必殺技”はなぜ決まる? 野澤武史氏が明かす「成功の裏に“2人の男”の存在」
posted2023/10/02 17:01
text by
野澤武史Takeshi Nozawa
photograph by
Kiichi Matsumoto
2019年とは明らかに違うポジショニング
前回の2019年大会から姫野の代名詞として有名になった「ジャッカル」。タックルで倒された相手からボールを奪うことを指しますが、タイミングや位置取り、瞬時の判断が必要となる難しい技でもあります。
サモア戦の「ジャッカル」を振り返ってみましょう。9点リードの後半開始早々、サモアにキックで22mラインを越えられた後、迎えた相手ボールのラインアウト。サモアの連続攻撃を受ける中で、密集の外側から“獲物”を見つけた姫野が素早くボールを奪い「ジャッカル」を成功させました。
この時の姫野のポジショニングにフォーカスしてみると、2019年大会時とは違う明らかな変化に気がつきました。姫野がジャッカルに成功するシーンで彼はラックが出来た時に、一番近い位置に立つ「柱」を意味する「ピラー」と呼ばれる位置にポジショニングしています。これはイングランド戦も同様で、映像で確認するとジャッカルに成功していない場合も、この位置に意図的にポジショニングしているように見えます。通常ボールをもらう選手の対面にはラックから3番目のディフェンダーがタックラーとして立ち、その内外のアシストタックラー、つまりラックから2、4番目に位置する選手が連携して相手を止めます。姫野はその「さらに内」に立つことで倒す作業ではなくジャッカルに専念しています。
2019年は姫野個人の判断でジャッカルだったが…
2019年大会で姫野は「ジャッカル」を4試合で5度成功させていますが、映像を見返すと、当時はラックから4番目、5番目といった位置に立ってタックルをしていた。ここは主にチームのアタックの要が攻撃を仕掛けてくるのを止めるのが役割です。その中で、相手がたまたま早く倒れた時や、サポートが遅れた時などに素早く走っていって「ジャッカル」を仕掛けていました。4年前のプレーは姫野個人の判断で偶然のチャンスを狙っていた形ですが、今回は違う。組織として意図的に「ジャッカル」を狙うポジションに入り、必然の成功を勝ち取っている。これは大きな変化です。