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「姫野のジャッカルは4年前と大きく違う」姫野和樹の“必殺技”はなぜ決まる? 野澤武史氏が明かす「成功の裏に“2人の男”の存在」
text by
野澤武史Takeshi Nozawa
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/10/02 17:01
今大会、日本代表のキャプテンを務める姫野和樹。代名詞“ジャッカル”は健在だが、実は「4年前とは異なる」と野澤武史氏は解説する
そもそも最も内側となるこの位置は、「ピラー」として大抵はバックローではなく大きな体格のプロップの選手が立つことが多い。ディフェンスのスペシャリストが立たないのが一般的です。ところが、姫野はわざと「ジャッカル」の餌場に到達しやすいタックラーの2つ内側(主にピラー)にポジショニングし、タックルが発生した瞬間には、すでに真後ろの「ジャッカルポジション」に移動している。ラインディフェンスでは裏に戻らず、前に出ながらパスがあると内側を埋めていくのが原則ですが、彼は自分の仕事が終わるとディフェンスラインの裏にコースを変えてジャッカルの起こりそうな場所に誰よりも早く駆けつけるのです。
姫野のジャッカルを下支えする2人の男
なぜ姫野はこのような位置取りをすることができるのか。実はこの布陣を可能にしているのが、フランカーのピーター・ラブスカフニ(東京ベイ)と、リーチ マイケル(BL東京)の献身です。先にも述べたように、本来ならばバックローには守りにくい10番の外側のDFなど、広いところに立ってディフェンスをさせたい。姫野がそこにいないことで、順目(前の攻撃と同じ方向への攻め)のディフェンダーが足りなくなってしまうというリスクもあります。そこをカバーして、外側の広いエリアのディフェンスを働き蜂のように請け負っているのがラブスカフニとリーチというわけです。
振り返ってみると、バックローの6、7、8番は、2019年大会から4年間、ほぼこの3人で固定されています。もはや3人の動きは阿吽の呼吸。姫野の「ジャッカル」は彼1人の成せる技ではなく、3人の相乗効果であり「ワンチーム」による結実と言えるわけです。今大会前にいずれも出場停止期間があったリーチ、ラブスカフニを絶対にメンバーから外せなかったのもこの安定感あればこそです。