ラグビーPRESSBACK NUMBER
「井端弘和のような堅実さ」23歳の仕事人・長田智希が見せていた“実はスゴイ”守備「高校2年から危機管理能力の高さは抜きん出ていた」
posted2023/09/20 17:23
text by
野澤武史Takeshi Nozawa
photograph by
Kiichi Matsumoto
派手さはないが、よく見て欲しい
筋金入りのラグビーファンも“にわか”の方も、試合を見た後にぜひもう一度、“長田カメラ”で見逃し配信を見てみて欲しいですね。長田は決して派手さはないですが、見れば見るほどその良さが分かる選手です。グラウンド上での彼は、前を見たり横を見たりと常にキョロキョロしています。状況を的確に捉えて相手に寄っていったり、逆に横に開いていったりと、その自在な動きはまるで楽器の「アコーディオン」のよう。細やかに気を配って対応するそのプレーには、日本人ならではの繊細さがあります。
例えば、イングランド戦の後半16分からの攻防。12−20と8点差になった直後に、WTB松島幸太朗(東京SG)が相手DFを切り裂きラインブレイクしていく印象的なシーンがありました。あの時、テレビ画面で言うと一番手前側で、キックパスをもらおうと一目散に走っているのが長田です。相手がそのボールを奪うや、今度は逆サイドまで戻ってDFに転じている。さらに松島がトップスピードで抜けていくその時には、テレビ画面の奥側にあたるウイングの大外の位置で手を上げています。キックパスをもらえればトライできるスペースを見つけて、味方に指示しているんです。その声は届かず、最後はヴァルアサエリ愛(埼玉WK)のノックオンで終わってしまいましたが、この数分間のプレーひとつとっても、彼のスペースを見つける能力がずば抜けていることを表していると思います。
彼ひとりでグラウンド半面くらい守っちゃう
もうひとつ。後半30分から33分ごろにかけて、セットピース(セットプレー)からイングランドに攻め込まれ、日本がゴール前で守り切る時間がありましたが、この時の長田の危機管理も素晴らしかった。前に出てパスコースを塞ぎ相手のアタックの選択肢を消したり、FWが止めないといけないようなゴール前ギリギリのところでタックルしたり……。長田のディフェンスが素晴らしいのは、絶対に外にランナーを漏らさないこと。相手のアタックの力を内側に内側にと入れていき、外側を走らせないので、たとえ抜かれても味方が追いついたり自分が戻ったりして対応できるんです。多彩なパターンを持つ彼のディフェンスは、相手からすると相当面倒な存在だと思いますよ。