スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
箱根駅伝“まさかの”13位、シード落ちから1年…強い早稲田大は帰ってくるか? 花田新監督の改革「食事、お風呂、寝起きも学生と一緒です」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2022/12/31 17:00
早大の主将・鈴木創士(左)。花田新監督から「泥臭いことをやっていこうよ」と言われたことを明かした
16人の登録メンバーが全員出席した会見では、改革の中身がうかがえる言葉のヒントがいくつか散りばめられていたが、もっとも印象的だったのは、鈴木創士主将(4年)の言葉だ。
「前回、シード権を失い、予選会スタートの1年になりましたが、6月に花田さんが監督に就任されて、『泥臭いことをやっていこうよ』という言葉がありました。そこから僕たちもつらい思いというか、地道なことをやってきたので、それを結果に結びつけたいと思います」
キャプテンの話した「泥臭いこと」の中身が気になるところだが、花田監督に確認すると、苦笑しながらこう説明してくれた。
「私からすれば、特別、泥臭いことをしているわけではないんです(笑)。卒業した学年にスピードがある選手が多かったこともあり、前年まではセンスを磨く練習が多かったようです。ただ、私が練習に見学した時期には、ケガのため部員の3分の1くらいしか練習に参加できていない状況でした。『これは、じっくり“地脚”を作ることが必要だな』と思いました」
地脚。これは花田監督が好んで使う言葉だ。
かみ砕くなら、ケガをせず、練習を継続して積むことが出来て、たくましい選手、ということになるだろうか。
練習内容はスピード系のものから、距離走、ロングインターバルのメニューが増えていく。夏合宿ではカーボンプレート内蔵のシューズに頼ることなく、淡々と距離を踏んだ。その結果が予選会での4位通過(本来は1年生の山口智規がアクシデントに見舞われなければ、トップ通過していただろう)、全日本でのシード権獲得、そしていまはケガ人がいない状態で箱根に臨める状況につながっている。
これまでのところ“地脚作戦”は成功を収めている。さて、箱根ではどんな成果が見られるだろうか。
「指導者は辞書だから、なんでも聞いて欲しい」
そしてもうひとつ、会見で花田監督が話した言葉で印象的だったのは、選手との「距離感」だった。
群馬県の高崎市に自宅を持つ花田監督は、車通勤に加え、週に3、4日は所沢にある競走部の合宿所で選手と一緒に食事、お風呂、寝起きを共にする。「学生はお風呂のなかでもスマホをいじってます」と苦笑するが、今年はクリスマスイブのチキンも学生と食べた。
学生との間合いについては、これまでの指導歴が生きていると話す。