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なぜ“ジョーカー・三笘薫”は機能しなかったのか? 中村憲剛が無念のクロアチア戦を徹底分析「日本の強みは研究されていました」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2022/12/09 17:00
カタールW杯で日本の切り札として活躍した三笘薫。クロアチア戦でも64分から起用されたが、得点に絡むことはできなかった
ジョーカー・三笘薫は「はっきりと警戒されていた」
クロアチア戦の日本は、前半のいい時間帯に先制しながら、後半は前3試合ほどパワーを出せませんでした。その理由は、おそらく先制したことと無関係ではありません。
僕自身の経験から選手心理を探ると、勝っていて守らないといけないものがあるときに出るパワーと、先制されたことで「攻めるしかない」というメンタリティになったときのパワーはまったく違います。
さらに言えば、同じ1対1のスコアでも、奪い返した展開はチームの勢いが俄然増します。ドイツとスペイン相手には追いついて勢いがつき、そのまま逆転まで持っていくことができましたが、クロアチア戦は追いつかれる展開でした。メンタル的に切り替えているつもりでも、「追いつかれた」ことに意識が傾き、そこからもう1点を奪いにいくパワーを再点火させるのは簡単ではありません。失点場面が頭に残り、「同じことをやられて逆転されてはいけない」という心理状態にもなります。
追いつかれて勝ち越さなければならないけれど、勢いはクロアチアへ傾きつつあるので、思い切って動くのは難しい。こうした心理状況にあったのか、1対1になった後の日本は足取りが少し重く見えました。
日本の強みも研究されていました。これまで交代出場した試合すべてで決定機を作り、ギアチェンジャーの役割を担っていた三笘薫が、はっきりと警戒されていました。彼が出場するとすぐに右ウイングを入れ替え、その勢いにフタをしてきました。ダブルチームで対応できるようにしたのです。
1対1の均衡を破るために、交代以外にもギアを上げて動くことはできたと思います。
たとえばシステムの変更です。5-4-1から4-3-3へ変えるなどの選択肢はありましたが、森保一監督はあえてシステムを動かさなかったと思いました。その考えは理解できます。
あの状況で自分たちから動いて失点するリスクを避けて、5-4-1のままで耐えながら少ないチャンスに賭け、PK戦も視野に入れていたのではないでしょうか。後半から延長戦にかけて選手交代をしたものの、攻撃にボリュームを出すことができず、クロアチアが日本の攻めに慣れてきたこともあって、攻撃は散発に終わりました。しかし、選手交代をして得点を奪おうとしてくるクロアチアの攻撃を、身体を張って粘り強く対応し、失点は許しませんでした。
<#2、#3へ続く>
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