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なぜ“ジョーカー・三笘薫”は機能しなかったのか? 中村憲剛が無念のクロアチア戦を徹底分析「日本の強みは研究されていました」
posted2022/12/09 17:00
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
新しい景色を、見ることはできなかった。
大会16日目となった12月5日のラウンド16で、日本はクロアチアに敗れた。PK戦による敗退は記録のうえでは引き分けとなるものの、ベスト8進出は叶わなかった。残酷な現実を突きつけられた。
私たちはこの敗戦を、どのように受け止めればいいのだろう。元日本代表の中村憲剛氏に聞いた。(全3回の1回目/#2、#3へ)
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さて、何から触れればいいものか。
クロアチア戦が終わってから、ずっと考えています。
まず伝えたいのは、日本サッカーは間違いなく前進している、ということです。今回のチームの作り方でドイツとスペインにアップセットを起こし、クロアチアとギリギリの勝負を演じてPK戦にまで持ち込んだ。ベスト8に手が届くところまで近づいたからこそ、まだ距離がある、とも感じています。ベスト8の麓まで来たからこそ、その高さと厚みが見えました。
スタイルを押し出してきたドイツとスペイン
ドイツとスペインは、確固たるスタイルを持っています。攻撃と守備におけるコンセプトとして、ボールを奪ったあと、失ったあとに何をするべきかがはっきりしています。プレーモデルは異なるものの、やることは明確という共通点があります。
明確なスタイルを持つ両者に日本がどう戦ったかと言えば、ドイツ戦は圧倒された前半を踏まえて、後半からシステムも含めてやり方を変えたことで勝利を手繰り寄せました。スペイン戦は90分を通して惑わずに、プラン通りの戦いで勝利しました。
とくにスペイン戦は、相手にボールを持たれることを承知のうえで、「まずしっかりとした守備から入る」という戦い方が、マインドも含めて明確だったと思います。ドイツもスペインも、攻撃ではボールを握ってゴールを奪う、守備では下がらずに前線からプレス、ボールを失えば即時奪回からのショートカウンターと、自分たちのスタイルを前面に押し出して日本に向かってきました。彼らが普段やらないようなこと、たとえばロングボールを多用したり、自陣で守備ブロックを築いて日本にボールを持たせる時間を作ったり、ということはほとんどやってきませんでした。日本からすると、相手の出方を想定して対応できたのではないかと思います。