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「カウンターで何か起こりそうだな」“控え組”浅野、南野、堂安が抱いていた“逆転の発想”「ふざけんなよ」「…無視してやってきてよかった」
posted2022/11/27 11:02
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Kaoru Watanabe/JMPA
グループリーグ初戦のドイツを撃破し、歴史的な勝利を挙げた日本代表。前半を1-0で耐え、後半に戦術的な変化と攻撃的な選手を起用したことが逆転劇に繋がった。
クラブでも代表でも苦しい時代を乗り越えてきた3人がピッチに
過去、日本代表が戦ったW杯で、途中出場した選手がここまで活躍し、結果に繋げたことは記憶にも記録にもない。もちろん逆転劇も過去6大会でなかった。そういう意味でも今回のドイツ戦の逆転勝利、しかもW杯優勝経験国を破ったことは歴史的快挙と言える。
その歴史の扉を押し開けたのが、5名の交代選手だが、とりわけ同点ゴールを決めた堂安律、その同点ゴールをアシストした南野拓実、決勝ゴールを決めた浅野拓磨は、この結果を出すまでクラブでも代表でも苦しい時代を乗り越えてきた同志とも言える間柄だった。
堂安「ふざけんなよっていう思いで見ていました」
後半26分、田中碧に代わってピッチに入ったのは堂安だった。
ベンチでは、長友佑都に「決めて来いよ」と尻を叩かれ、その思いを秘め、ピッチに出た。堂安は、森保一監督の代表がスタートした当初、右MFの絶対的な存在として君臨していた。だが、2019年のアジアカップ以降、伊東純也らの台頭により、チーム内の序列が下がり、代表でスタメン出場の機会が失われていった。そして、今年3月、カタールW杯最終予選の突破がかかったオーストラリア戦に堂安は招集されなかった。大事な試合に声がかからなかった現実に強気の堂安もさすがに愕然とした。
「今年の3月に代表を外れて客観的に代表の試合を見た時、正直、『悔しい(という気持ち)』しかなかったです。チームメイトが活躍するのは嬉しいですけど、その反面、ふざけんなよっていう思いで見ていました。ただ、同時に輝いているみんなを見た時、格好いいなあって思ったし、その一員になりたいなとハングリーな気持ちになりました」
その頃、堂安は所属するPSVでも調子がいまひとつで気持ちが整わず、代表から外れた。だが、自分の置かれた状況を直視し、気持ちを切り替え、環境を変えた。PSVからフライブルクへの完全移籍を果たしたのだ。