話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「カウンターで何か起こりそうだな」“控え組”浅野、南野、堂安が抱いていた“逆転の発想”「ふざけんなよ」「…無視してやってきてよかった」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2022/11/27 11:02
前半、ベンチで戦況を見つめた堂安律、浅野拓磨、南野拓実。それぞれに苦悩の時期と逆襲に燃える思考法があった
浅野は、後半12分、前田大然に代わって投入され、その26分後、決勝ゴールを叩き込んだ。
「(板倉)滉が持った瞬間、来るかなって思った。僕らは内側仲間(内側靭帯損傷)なので、よく一緒に話をして、意思疎通が出来ていた。シュートは狙い通りというわけじゃないですけど、思い切って打ったし、みんなの思いが強い分、それがボールに乗っかったと思います」
浅野がゴールを決めた瞬間、ベンチからすべての選手が飛び出して喜びを爆発させ、18番はもみくちゃにされた。浅野はうれしさを隠さずとも、どこか冷静に見えた。それはここに至るまでの自分を取り巻く環境がネガティブな空気にさらされ、厳しい時間を過ごしてきたからだ。
浅野は、前回のロシアW杯の前、最終予選のオーストラリア戦でゴールを挙げ、7大会連続でのW杯出場に貢献。だが、本大会では予備登録となり、出場は叶わず、「選手としてこんなに悔しいことはない」という苦い思いをロシアで経験した。
次のカタールは絶対にピッチに立つことを目標に定め、森保監督の信頼を得てきたが、今年9月にシャルケ戦で右膝内側側副靭帯断裂という怪我を負った。W杯のために手術はせず、保存治療を行ったが所属するボーフムでは試合に出場せずの状態がつづいたため、W杯のメンバーに入るのは難しいのではという声が多く流れた。そういう声に浅野は、試合後、反論するように訴えた。
4年間いろんなことを耳にして、無視してやってきてよかった
「4年前から1日も欠かさずに、こういう日を想像して準備してきたことがゴールに繋がった。途中から入って全力でプレーするのはいつも通りですし、僕がゴールを決めたことを奇跡というけど、この結果を出すことを果たして、どのくらいのメディアが思っていたことか。この4年間、いろんなことを耳にして、無視してやってきてよかった」