話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
「カウンターで何か起こりそうだな」“控え組”浅野、南野、堂安が抱いていた“逆転の発想”「ふざけんなよ」「…無視してやってきてよかった」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2022/11/27 11:02
前半、ベンチで戦況を見つめた堂安律、浅野拓磨、南野拓実。それぞれに苦悩の時期と逆襲に燃える思考法があった
南野は、当初、W杯予選を戦う代表の不動のレギュラーだった。
2021年6月、アジア2次予選のタジキスタン戦で、日本代表史上初のワールドカップ予選開幕からの7戦連続ゴールを達成、最終予選もエースとして期待された。だが、当時所属していたリバプールFCではFAカップでこそ結果を残したが、リーグ戦では試合出場できない状況がつづいた。今年6月にモナコに移籍してもなかなか出場機会に恵まれず、代表では鎌田、久保建英らの台頭があり、いつしか控えが定位置になっていた。W杯に入ってからもその序列は変わらず、それでも南野は淡々として「試合に出た時に結果を出すだけ」と言い続けてきた。
「クラブでは自分が生き残っていくために、自分中心にやるのが当たり前というか、自分が出て、プレーするのを優先します。でも、代表は別なんですよ。もちろん最初から出られない悔しさはあります。でも、今はW杯なんで、僕は誰が出ても日本が勝ち進むことが一番だと思っているんです。スタメンでも途中から出ても、チームのために自分が何ができるのかっていうことしか考えていない。それがワールドカップでの自分やと思っています」
あそこでフカしていたら何もならない
後半30分に投入された南野は、その直後、三笘がボールを持ち、ドリブルで仕掛けてきた時、パスが出てくると直感し、そのパスを受けて中にシュート性のボールを入れた。それが堂安のゴールにつながった。
「ボールを受けて、中で入れる時、あそこでフカしていたら何もならない。一発で決めるよりも中に振り抜いて早いボールを入れれば何かが起こるかなって思っていた。実際に拓磨が走っていたし、オウンゴールもあるやろって思っていました。最後は律のゴールに繋がってよかったです」
南野は、ホッとした表情を見せた。
リバプール時代、チャンピオンズリーグ決勝のレアルマドリー戦でベンチ入りし、ビッグマッチをその目で見てきた。そういった場を経験する中で、大舞台で活躍する選手を間近で見られたことは南野にとって貴重な経験になった。
「W杯のようなビッグマッチでどういう準備をしている選手が試合を決めるのかというのは、自分の中で理解しています。シーズンのパフォーマンスとか数字ではなく、何かを感じる力、決める力というのが必要だと思っています」
その力を南野は短い時間ながら発揮し、堂安にボールを繋いだ。
浅野「選手としてこんなに悔しいことはない」
この時、ファーサイドを駆けていたのが浅野だった。