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原辰徳が明かした「私が監督なら大田を出さなかった」巨人ドラ1・浅野翔吾…じつに14年ぶりの当たりクジで思い出す“大田泰示の後悔”
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byJIJI PRESS
posted2022/10/27 17:03
10月20日のドラフト会議。阪神との競合の末、巨人が交渉権を獲得。野球部の仲間らに祝福されるドラ1・浅野翔吾外野手(高松商)
もちろん、すぐにレギュラーというわけではない。高卒野手が出てくるまでには一定の時間がかかる。数年後、丸が負担軽減でレフトにまわる頃、センター浅野が定着。やがて3番浅野・4番岡本の“AO砲”結成へ……というのが理想的かつ現実的なプランだろうか。同時に浅野のプロ生活のスタートと育成のベースは、あと2年の契約が残る原監督に課せられた最後の大仕事のひとつでもある。
今の巨人は外野の層の薄さがウィークポイントになっている。今季、外野陣の中でセンターを守り続けチームを支えたのは、来年4月で34歳になる丸だった。守備に不安のある両翼のウォーカーやポランコが途中交代で下がると、29歳の重信慎之介(打率.216、本塁打0)や同じく93年組の若林晃弘(打率.200、本塁打0)、27歳の松原聖弥(打率.113、0本塁打)らが出場した。そういう壊滅的な状況でも、二軍からの突き上げはほとんどなかった。だからこそ先日のドラフトで球団初の高校生外野手1位指名であり、2位に大学生外野手の萩尾匡也(慶大)を持ってきたということだろう(1、2位ともに外野手も球団初)。開催中のみやざきフェニックス・リーグでは、将来の主軸を期待される20歳の大型スラッガー秋広優人が、一塁だけでなく左翼も守っている。
当たりクジに直筆で「巨人軍は待ってるぜ!」
22年シーズンは5年ぶりのBクラス転落と、確かにチームは過渡期である。そんな中、投手陣は同一シーズンでプロ初勝利8人のプロ野球初の快挙。最多奪三振のタイトルを獲得した新エース候補の戸郷翔征が最多勝争いにも顔を出し、新クローザーの大勢が新人最多タイの37セーブを記録した。その裏で、オフに山口俊や井納翔一らベテラン陣の退団が発表されるなど急激な世代交代が進んでいる。
あとは野手陣の整備である。キャプテン坂本は故障がちで年齢的な衰えが見え、岡本も5年連続30号こそ達成したが終盤は打撃不振で4番から外された。今こそ、なにか組織の停滞ムードを変える起爆剤が必要だ――。そんなタイミングで、原監督自ら高校ナンバーワン外野手の浅野翔吾を引き当てたのだ。あれだけ真っ赤な顔で喜び、感情を露わにする原監督は久々に見た。
今季の原采配は、ときに先行投資的に若手を起用しなければならない事情はあったにせよ、何としてでも勝つという貪欲さがほとんど感じられなかったのも事実だ。ベンチではどこか一歩引いたような表情も目立った。それが長期政権のマンネリなのか、指揮官の一種の老いなのか、勝っても負けても淡々と試合を重ねているような雰囲気すら感じられた。
やはり、あらためて原辰徳の魅力は「熱さ」だと思う。それは真顔で臆せず「ジャイアンツ愛」とか言っちゃう熱さだ。その熱は選手を、コーチを、そしてファンを巻き込み、新たな熱を作る。浅野の当たりクジを引いた直後のタツノリスマイルには、その「狂熱」が確かにあった。
ドラフト会議の翌日、巨人の指名挨拶を受けた浅野には、スカウト経由で原監督直筆のメッセージ入りの当たりクジ用紙が手渡された。そこには躍るような文字でこう書かれていた。