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プロ野球PRESSBACK NUMBER
“ドラフト最下位の男”が日本シリーズで好投…9年前、宮城の“小さな町”で発掘したスカウト「見つけてもうた!と叫んで鳥肌が…」
posted2022/10/28 11:03
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph by
Sankei Shimbun
神宮球場の一塁側・内野席で日本シリーズ第2戦を見つめていた相原正美(元岩出山野球部監督)は、教え子である今野龍太の出番を待っていた。「8回に登板しそうだ」。席がちょうどブルペンの前だったため、慌ただしく準備するヤクルト中継ぎ陣の様子がよく見えるのだ。
恩師を招待した日本シリーズで…
4番手でマウンドに向かう今野に心の中でエールを送ると、祈るような気持ちで戦況を見守った。3点ビハインドの8回表から9回表。今野は回またぎで打者6人を無安打無失点無四死球と完ぺきに抑えて仕事を果たした。この流れに乗ってか、ヤクルトは9回裏の土壇場で内山壮真に同点3ランが出て、試合は延長12回3-3でゲームセット。5回から投手7人を繋いだ継投策。相原監督はその一翼を担った今野に感動していた。今野が相原のためにと用意してくれた「特等席」で。
「神宮で本人を見たのは今日が2回目。今野の好投を見られたのも良かったですが、高津(臣吾)監督のさい配や、ベンチでの盛り上げ方、コミュニケーション力が凄く勉強になりました。ヤクルトは明るくていいチームですね。本当にいい環境で野球ができていると思います。持ち帰ってうちのチームに生かします」。現在、仙台西で監督を務める相原にとって高津ヤクルトのチーム作りからヒントを得た上京にもなった。
「岩出山の星」と呼ばれるまで
今野の故郷、岩出山(いわでやま)は、かつて伊達政宗が12年住んだ岩出山城があり、仙台と並ぶ宮城の城下町として親しまれている。学校も岩出山城跡のすぐとなりにあり、東北新幹線の古川駅までは車で30分ほど。2006年の合併で大崎市に加わった人口約1万人の小さな町だ。
この土地で生まれた今野は小2で野球を始め、岩出山中野球部から岩出山高に進学。2013年ドラフトで楽天から9位指名を受けた。6シーズン在籍したのち戦力外通告を受けるも、ヤクルト移籍をきっかけに飛躍。2021年はキャリアハイの64試合登板、7勝28ホールド。リーグ優勝、日本一に貢献した。