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強豪フランスに敗れるも「愛さずにはいられない」2つのトライ…“1年の遅れ”を取り戻したラグビー日本代表の驚くべき修正能力とは? 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/07/12 17:01

強豪フランスに敗れるも「愛さずにはいられない」2つのトライ…“1年の遅れ”を取り戻したラグビー日本代表の驚くべき修正能力とは?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

国立競技場で行われたフランス戦ではFB山中亮平(34歳)が2トライを奪う活躍。惜しくも敗れたが、収穫もある“サマーテスト”だった

 そして前半最後のトライも技術が凝縮したトライだ。

 フランスは自陣からアタックを仕掛け、ミッドフィールドで3番のバンバがボールをこぼす。それに(3)ヴァルアサエリ愛が反応し、日本はすぐにカウンターに移行するが、このとき左サイドに数的優位を確保していた。ところが、(9)齋藤直人からボールを受けた(8)ジャック・コーネルセンは直進してしまう。好機を逸したかに思えたが、ここから日本は惚れ惚れするような細かいつなぎを見せる。

 (10)李承信(15)山中(2)坂手淳史(12)中野へと細かいパスが秒刻みで渡り、ここからのオフロードパス2本は出色の技術だった。

 (12)中野は上背のある相手14番に腕をふさがれないように右腕を上方にしてアンダーハンドのオフロードパスを出し、(2)坂手へとリターン。これは体格のある中野ならではの技術だろう。

 そして(2)坂手は、相手9番にタックルを受けながらも見事に上半身を支え、反転しつつ、左手でオフロードを(6)リーチ マイケルに出している。(2)坂手の利き腕がどちらかは分からないが、もしも利き腕でなかったとしたら、練習の賜物としか言いようがない。

9番・齋藤直人のフォローに驚く

 見事だったのは、そこからの湧き出るようなフォロー。(6)リーチの横には(9)齋藤がフォローに走っており、相手15番が逡巡するところを(6)リーチがかわし、最後は余裕をもって(15)山中へとラストパスを出した。

 映像で確認すると、改めて齋藤のフォローに驚く。ひとつめのトライでも、素晴らしいい位置でフォローに走っていたし、このリーチの突進は、齋藤のフォローとの合わせ技である。齋藤はさばきだけではなく、大学時代からフィニッシャーとしてのラン能力があり、他のSHとは一線を画している。

 狭い空間で織りなされる細かいパス。

 日本のアタックの水準の高さを示すものである。

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ジェイミー・ジョセフ
山中亮平
ゲラード・ファンデンヒーファー
シオサイア・フィフィタ
中野将伍
ディラン・ライリー
トニー・ブラウン
ヴァルアサエリ愛
齋藤直人
ジャック・コーネルセン
坂手淳史
リーチ マイケル
中村亮土
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ピーター・ラブスカフニ
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