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強豪フランスに敗れるも「愛さずにはいられない」2つのトライ…“1年の遅れ”を取り戻したラグビー日本代表の驚くべき修正能力とは?
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![生島淳](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/4/-/img_746f83dd4814ce9e272d231112e07dfb3376.jpg)
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/07/12 17:01
![強豪フランスに敗れるも「愛さずにはいられない」2つのトライ…“1年の遅れ”を取り戻したラグビー日本代表の驚くべき修正能力とは?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/8/5/700/img_8569fa666bc0d0bc5039cb4287e6100d198899.jpg)
国立競技場で行われたフランス戦ではFB山中亮平(34歳)が2トライを奪う活躍。惜しくも敗れたが、収穫もある“サマーテスト”だった
そして前半最後のトライも技術が凝縮したトライだ。
フランスは自陣からアタックを仕掛け、ミッドフィールドで3番のバンバがボールをこぼす。それに(3)ヴァルアサエリ愛が反応し、日本はすぐにカウンターに移行するが、このとき左サイドに数的優位を確保していた。ところが、(9)齋藤直人からボールを受けた(8)ジャック・コーネルセンは直進してしまう。好機を逸したかに思えたが、ここから日本は惚れ惚れするような細かいつなぎを見せる。
(10)李承信→(15)山中→(2)坂手淳史→(12)中野へと細かいパスが秒刻みで渡り、ここからのオフロードパス2本は出色の技術だった。
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(12)中野は上背のある相手14番に腕をふさがれないように右腕を上方にしてアンダーハンドのオフロードパスを出し、(2)坂手へとリターン。これは体格のある中野ならではの技術だろう。
そして(2)坂手は、相手9番にタックルを受けながらも見事に上半身を支え、反転しつつ、左手でオフロードを(6)リーチ マイケルに出している。(2)坂手の利き腕がどちらかは分からないが、もしも利き腕でなかったとしたら、練習の賜物としか言いようがない。
9番・齋藤直人のフォローに驚く
見事だったのは、そこからの湧き出るようなフォロー。(6)リーチの横には(9)齋藤がフォローに走っており、相手15番が逡巡するところを(6)リーチがかわし、最後は余裕をもって(15)山中へとラストパスを出した。
映像で確認すると、改めて齋藤のフォローに驚く。ひとつめのトライでも、素晴らしいい位置でフォローに走っていたし、このリーチの突進は、齋藤のフォローとの合わせ技である。齋藤はさばきだけではなく、大学時代からフィニッシャーとしてのラン能力があり、他のSHとは一線を画している。
狭い空間で織りなされる細かいパス。
日本のアタックの水準の高さを示すものである。