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強豪フランスに敗れるも「愛さずにはいられない」2つのトライ…“1年の遅れ”を取り戻したラグビー日本代表の驚くべき修正能力とは?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/07/12 17:01
国立競技場で行われたフランス戦ではFB山中亮平(34歳)が2トライを奪う活躍。惜しくも敗れたが、収穫もある“サマーテスト”だった
今回のサマーテストで、コロナ禍とケガの影響で、日本は多くの選手を使わざるを得なかった。それでも、日本はそれなりに戦えた。
この経験値の蓄積は、大きい。
身長2mを超えるLOのワーナー・ディアンズはさらに成長するだろうし、FLのベン・ガンターは勇猛な働きを見せた。BKではSOの李が第2テストでは第1テストの反省を見事に生かし、中野とライリーのセンター陣は、日本に必要な繊細な技術を持っていることを証明した。また、ベテランのFB山中は、いまだ成長していることを示した。
今回、代表で活動できなかった選手には、LOのジェームズ・ムーア、FLではピーター・ラブスカフニ、No.8の姫野和樹、SHの流大、そして切り札の松島幸太朗だっている。全員がそろい、意思統一できれば、楽しみなチームが出来上がるだろう。
2022年は「鍛錬の時期」
世界でサマーテストは続いている。
アイルランドは史上初めて、敵地でオールブラックスを破った。しかも、完勝だ。これによって、オールブラックスのイアン・フォスター監督の去就が大いに注目されることになった。
オーストラリアとの第1戦に敗れ、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ解任の噂が本格化しつつあったイングランドは、第2戦で踏ん張った。
そして世界ランキング1位、南アフリカはウェールズに敗れた。
ラグビー界での南北逆転、地殻変動が起きているのだろうか?
昨年のオータムテストで、アイルランドに完敗し、先行きが不安視された日本だが、ようやくあるべき道に戻ってきた。
チーム作りは、刀鍛冶の工程に似ているという。
原料鉄を鍛錬し、焼入れを行い、そして仕上げる。
さながら、2022年はまだ鍛錬の時期だろうか。
オータムテストではフランスをはじめ、強豪国との対戦が予定されている。鍛錬から焼入れへの移行で、どんな変化が見られるのか、楽しみでならない。
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