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“元同部屋”森保監督へ集まる批判に「羨ましいな」 大谷翔平の母校・花巻東で指導する柱谷哲二(57)が今も抱き続ける野心とは? 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2022/01/31 11:04

“元同部屋”森保監督へ集まる批判に「羨ましいな」 大谷翔平の母校・花巻東で指導する柱谷哲二(57)が今も抱き続ける野心とは?<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

2018年から花巻東高でテクニカルアドバイザーとして指導にあたっている柱谷哲二(57歳)。ともに「ドーハの悲劇」を経験した森保監督へエールを送った

 その後、J3のガイナーレ鳥取、JFLのヴァンラーレ八戸、J3のギラヴァンツ北九州の監督を歴任した柱谷は現在、花巻東高サッカー部テクニカルアドバイザーを務めている。

 きっかけは国士舘大時代の恩師からの連絡だった。

「花巻東高は野球部をはじめ、どの部活も強豪なんだけど、サッカー部だけがちょっと取り残されていた。野球部の監督で、大谷翔平を育てた佐々木(洋)さんも国士舘出身で、大澤(英雄)先生に相談したみたいなの。最初、兄貴(幸一)のところに連絡がいったんだけど、兄貴が断り、宮澤ミシェルさんも断って、僕のところに来た。僕も断ったけど、もう一度電話がかかってきて『お前しかいないから行け』って(苦笑)」

 しかし、佐々木から話を聞くうちに、柱谷はその人間性にひかれた。なにより再び選手育成に関われることも魅力に思えた。

「僕はJ1、J2、J3、JFLで監督をして、大学のコーチも経験した。高校年代を指導したら全カテゴリーを知ることになる(笑)。もちろん、次こそはプロチームで結果を残したいという野心もあるから、次の挑戦のために学び続けないといけない。まだ57歳だからね」

 高校の校庭はサッカー部が独占できるが、冬の間は雪が積もって使用できず、3月になっても雪解け水で田んぼのような状態。グラウンドを整備すると、地面に埋まっていた石が次々と姿を現すため、石拾いをしなければならなかった。

「チームを強くすることはもちろん、サッカーは子供を大人にするスポーツだから、挨拶や言葉遣い、互いにリスペクトする心、用具を大切にする気持ちを説いて、勉強もしっかりやれと。そうやって少しずつ土台を作る一方で、学校には、このまま放っておけば生徒たちがケガをしてしまいますよ、と訴えたの」

 すると、この2年間の文武両道が認められて人工芝のピッチ設立の話が生まれ、ついに21年秋に完成したのである。

 除幕式には盟友であるラモスが駆けつけてくれた。

「トークショーまでやってくれて、子供たちの質問にいろいろ答えてくれたの」

「俺たちは応援するしかないよね」

 イベント出席の依頼の電話をした際にラモスと話したのは、オフトジャパン時代のチームメイト、森保一現日本代表監督のことだ。

 21年9月に開幕したカタールW杯アジア最終予選では、オマーンとサウジアラビアに苦杯をなめさせられ、一時は窮地に立たされた。その重圧は相当なものであるはずだ。

「W杯の最終予選って、そんなに簡単なものじゃない。全国民の期待を背負っているし、突破して当たり前だと思われているし、どのチームも日本を倒そうとしているわけだから。でも、森保はそんなことは分かったうえで指揮官を引き受けて、本大会のベスト8、ベスト4の壁を破るんだという信念を持って戦っている。だからラモスさんとも、『俺たちはなんだかんだ言って、応援するしかないよね』って」

 森保ジャパンは10月に埼玉で行われたオーストラリア戦に2-1と勝利すると、11月のベトナム、オマーンとのアウェイ2連戦をいずれも1-0の勝利で乗り切り、W杯出場圏内の2位に浮上した。

 しかし、森保監督に向けられたサッカーファンの視線は、依然として厳しいものがある。

【次ページ】 監督批判は、サッカーが成熟した証

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