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田中碧「頭の中が整理されて世界が変わった」… アルゼンチン相手にも「もっとやれた」と語る急成長の源は?【インタビュー】
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKaori Nishida
posted2021/05/05 11:04
さわやかな笑みを見せる田中碧。フロンターレ、そして若き日本代表の中盤で存在感を見せている
「自分にプレッシャーを掛けた」アルゼンチン戦
――アルゼンチン戦後の会見でもうひとつ面白かったのが、「自分にプレッシャーを掛けていた」と話したこと。ここでアピールできなければ五輪が遠のくぞ、という思いがあったのかもしれませんが、普段から自分によくプレッシャーを掛けるんですか?
「いや、あのときが初めてですね。第1戦では(フロンターレでチームメイトの三笘)薫さんですら、自分の知っているパフォーマンスではなかったので、やっぱり簡単じゃないんだなって。そういう姿を見て、自分に対してよりプレッシャーを掛けたというか。ここでやれなかったら、普通の選手で終わるかもしれないぞって。アルゼンチンという素晴らしい相手に対して、自分がどれだけできるのか試されると思って、自分にプレッシャーを掛けました。緊張もしましたけど、ああやってプレーできたのは大きな自信になりました。すごく疲れましたけどね(苦笑)」
――プレッシャーの掛かったゲームということで思い出すのが、昨年9月のサンフレッチェ広島戦。アンカーのポジションを守田英正選手(現サンタ・クララ/ポルトガル)に奪われ、しばらく出られない時期が続いたのちに、インサイドハーフでスタメン起用された試合です。あのときも非常にプレッシャーが掛かったと思いますが、結果を残してポジションを掴んだ。そうした大一番での強さについて、自分ではどう思っていますか?
「たしかに、あの試合もすごく緊張しましたね。ただ、自分でも持っているというか、多少なりとも運があるのかなと思います。今回のアルゼンチン戦だって、もしかしたら僕のいない1戦目に勝っていたかもしれない。1戦目に敗れて2戦目が勝負の懸かったゲームになったことも含めて自分は持っているし、そこでそれなりのパフォーマンスを発揮できたというのは、少なからず運があるのかなと思いますね」
アルゼンチンから学んだ2つのこと
――では、南米チャンピオンと対戦して、田中選手個人として、チームとして、彼らから何を学ばないといけないと思いましたか?
「いろいろあるんですけど、まずは強度、インテンシティの高さですね。ブロックを作る時間がないくらい、常にボールを奪いにきた。その強度の高さは勉強になりました。あと、試合の運び方もすごくうまかった。きれいなサッカーではないですけど、相手が何をされたら嫌なのかを瞬時に判断できるというか」
――ロングボールを巧みに織り混ぜながら。
「僕たちがそれに対応しても、どんどん変えてくる。攻撃でも、守備でも、敵を見ながらサッカーをする部分は凄いと感じました。監督の指示なのかもしれないですけど、チーム全体で実行できるのが凄かった。特に第1戦では、勝負に徹して内容よりも結果を求めたサッカーをやっていましたから。勝ちにこだわることが何よりも重要なんだな、そこを求めてやらなきゃいけないなって改めて思いました」
<後編に続く。関連記事からご覧になれます。Number1026号でも「GO FOR TOKYO 2020」で田中碧の記事を掲載しています>