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田中碧「頭の中が整理されて世界が変わった」… アルゼンチン相手にも「もっとやれた」と語る急成長の源は?【インタビュー】
posted2021/05/05 11:04
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Kaori Nishida
J1で圧倒的な強さを誇る王者・川崎フロンターレの中盤で、ひと際存在感を放つ選手がいる。
プロ5年目を迎えるMF田中碧だ。
その活躍は所属クラブにとどまらず、3月末に行われた東京五輪代表のアルゼンチン戦では圧巻のパフォーマンスでチームを3-0の勝利に導いた。
久保建英、堂安律、前田大然、三笘薫といった東京五輪代表が誇る攻撃のタレントたちが輝けるかどうかは、ボランチのゲームコントロールに懸かっていると言っても過言ではない。
金メダル獲得を目指す東京五輪代表のキーマンは、何を思うのか。急成長を続ける俊英ボランチの"今"に迫る――。
3-0で勝ってもアルゼンチン戦は「もっとやれた」
――3月29日のアルゼンチン戦の記事で、自分のプレーが賞賛されていることに違和感を覚えているそうですね。だとしたら謝らないと。まさに僕はこのNumberWebで「まるで皇帝のようだった」と絶賛したので(笑)。
「いやいや、いいんですよ(笑)。褒めていただけるのは嬉しいんですけど、僕だけじゃないよ、ということなんです。後ろ(DF)がうまくサポートしてくれたから、自分が生きた。前(FW)もそうですけど、チームのおかげだと思っていて。それに、自分自身ももっとやれたと思っているので」
――プレーのディテールを見れば満足できないのも分かりますが、僕が絶賛したのは、その存在感。ゲームが始まってしばらくすると、周りが田中選手を探し、ボールを預けるようになった。「碧に渡せば安心だ」という感じで。自分でもボールが集まり始めたな、頼ってくれているな、と感じたのでは?
「そこは、たしかに感じましたね。欲しいときにボールが来たり、動き出してほしいタイミングで動き出してくれたり。そういうプレーは試合が進むにつれて増えていったと思います」
自分を知ってもらわないと力は発揮できない
――そうしたチームメイトからの信頼は、田中選手自身がピッチ上のパフォーマンスと積極的かつ的確なコーチングで掴み取ったものだと感じました。
「代表チームって、普段から一緒にプレーしているわけじゃないし、初めて一緒にプレーする選手もいるので、所属チームでやっていることを代表でもやるのは簡単じゃない。でも、代表で力を発揮できるかどうかが、選手としての価値の大きな違いになると僕は思っていて。
自分を知ってもらわないと力は発揮できないし、アルゼンチン戦ではボランチとして起用されたから、自分がゲームをコントロールしないといけない。ボールを持っているときのプレー選択だけでなく、持っていない状況でのコーチングやポジショニングも含めて。そういう意味では、昨年からフロンターレですごく意識してきたことをピッチで出せたのかな、という感じがあります」