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田中碧の“皇帝感”に万能な板倉滉… 東京五輪世代レギュラー争いは未招集組を含めてハイレベル【最新序列図あり】
posted2021/04/01 06:01
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Naoki Morita/AFLO,JMPA
ひとりの選手の存在によってこれだけチームが変わるのを見たのは、1997年5月の日韓戦で代表デビューを飾ったときの中田英寿以来だ。
ちょっと大げさかもしれないが、3月29日に行われたU-24アルゼンチン代表との第2戦で田中碧が示したパフォーマンスと存在感には、それだけのインパクトがあった。
アルゼンチンのプレスをモノともせずにボールを引き出し、軽快にさばく。狭いスペースで苦もなく受けて、素早くターンする。敵が1、2mの距離にいても、田中自身にとってはフリーという感覚だろう。
あまりの頼もしさにチームメイトも途中から、まずは田中を見るようになり、敵が近くにいてもボールを預けるようになった。同じピッチに立ったチームメイトから絶大な信頼を勝ち取ったわけだ。
さらに、自らボールを持ち運んで前線に鋭いパスを送り込んだかと思えば、相手選手を潰してボールを刈り取りもした。
「右から行け!」「縦を切れ!」と響く声
だが、それらのプレーと同じくらい際立っていたのが、声である。
会場のミクニワールドスタジアム北九州はサッカー専用スタジアムのため、ピッチとスタンドとの距離が近い。そのうえ新型コロナウイルス感染対策のため、観客の声援が禁止されていたから、ピッチ上の音がよく聞こえてきた。
そのほとんどが、田中のコーチング――。そう思えるほど、絶えず味方に強い口調で「右から行け!」「縦を切れ!」「下げるな!」といった指示を出していた。相手が年上の選手であってもお構いなしに、身振り手振りも交えながら。
後半開始直前、ピッチ上で円陣を組んだ際には、久保建英に熱っぽく語りかけ、久保は黙って何度も頷いていた。
「最近は上から見ている感覚というか、どうすればハマるのか頭の中でイメージできるようになってきた。それをいろんな選手に伝えれば、自分自身もやりやすいし、チーム全体も良い方向に行くのかなって」