甲子園の風BACK NUMBER
グッジョブ“甲子園DJ”! 「ランナー二塁、三塁ではこの曲を…」完璧な“録音応援曲”の切り替えがセンバツを盛り上げた
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2021/04/03 17:02
『アグレッシブ・ベースボール』のロゴ入りユニホームを着てアルプス席で応援する、東海大相模高校吹奏楽部(2019年夏)
リアルに友情応援に駆けつけた市立尼崎
今回音源録音ができなかった11校は、市立尼崎の音源を使用したが、例年沖縄代表校の友情応援を担当する同校吹奏楽部は、3月26日の具志川商-福岡大大濠戦に、リアルでも駆けつけていた。1回戦で、具志川商の野球部員が音源に合わせて大太鼓のリズムをとるのに苦労していたことを関係者から聞き、市立尼崎のパーカッションパートが担当することにしたのだ。
具志川商、福岡大大濠ともに、市立尼崎の音源を使用し、「具志川アルプスにいて、向こうからもうちの音が聞こえてくるという、不思議な体験をさせてもらいました(笑)。連日我が校の演奏が流れるので、生徒たちは、それはもう大喜びで、『うちの音が流れる学校を応援しちゃうね』と言っていましたね」と、吹奏楽部顧問の岩山悦志氏は笑顔で話す。
生演奏ならではの一体感にも気づいた
初の試みとなったブラバン録音音源応援は、吹奏楽部の顧問からも好評だった。
時間がない中何とか音源を準備した伝統校・天理は、「すべてリクエスト通りにかけてくれて、感謝しています」(吹奏楽部顧問・吉田秀高氏)
吹奏楽部が少人数の智辯学園は、
「スピーカーから流れるおかげで、人数のプレッシャーがないのはいいですね」(吹奏楽部顧問・青山浩氏)
と話す。たしかに、1回戦で当たった大阪桐蔭の吹奏楽部は、毎年約180人いる大所帯。生演奏だったら、30人に満たない智辯学園吹奏楽部の音量は、大阪桐蔭には到底かなわないが、録音音源だと両校適度な音量で流れるため、音量の差はまったく気にならなかった。音響スタッフに確認したところ、やはり「両校の音量が一定になるよう調整していた」とのことだった。
青山氏はこうも続ける。
「仕方ないとわかってはいるのですが、試合が盛り上がっている最中に、録音サイクルが切れて、前奏から再スタートせざるを得ないのがちょっと残念でしたね。生演奏に比べて臨機応変にできないというもどかしさはありましたが、全体としては成功だったのではないでしょうか」
「録音音源は初めてでしたが、さまざまな可能性を感じました。ただ、『今後は全部録音でいいのでは』と思ってもらいたくはないですね。やはりスタンド全体を巻き込む一体感やまとまりは、生演奏ならでは。早くコロナが収束して、夏は例年通り、ぜひまた沖縄代表校の友情応援がしたいです」(岩山氏)