甲子園の風BACK NUMBER
グッジョブ“甲子園DJ”! 「ランナー二塁、三塁ではこの曲を…」完璧な“録音応援曲”の切り替えがセンバツを盛り上げた
posted2021/04/03 17:02
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph by
Yukiko Umetsu
新型コロナウイルスの影響で、2年ぶりの開催となった第93回選抜高等学校野球大会。10年ぶりに東海大相模が春を制し、1日閉幕した。
観客数こそ減らしているものの、アルプス席からは吹奏楽部による応援曲が流れ、ヒットが出るとファンファーレが鳴り響く。テレビで観戦していると、いつものセンバツそのものだった。
今年は吹奏楽の応援は禁止となり、日本高等学校野球連盟は、事前に録音した音源を流すという初の試みにチャレンジした。基本ルールは「1チーム10曲まで」「1曲あたり2~2分半」「曲をかけるのは、打順ごとまたはイニングごと」の3つ。ヒットや得点時に流すファンファーレ、チャンスの時に流す曲など、学校ごとに異なるリクエストも、「可能な限り応えたい」と事前にヒアリングした。
現地観戦していても「いつもとほとんど変わらない」
阪神甲子園球場の音響担当など各方面との調整に時間がかかったため、音源提出期限まで余裕のない中、21校から音源が到着。「音源を用意できない学校もあるだろう」と、高野連は甲子園での友情応援経験豊富な尼崎市立尼崎高校吹奏楽部に音源収録を依頼した。同校の60曲の応援曲リストの中から『サウスポー』や『宇宙戦艦ヤマト』、『ルパン三世のテーマ』など、人気の定番曲や多くの人が知る耳なじみのある曲を高野連が選び、2パターンのCDを作成。音源のない学校が自由に使用できるように準備した。
音源を用意できなかった11校は、「市立尼崎の音源を使用」または、「音なしで、拍手などでの応援」のいずれかが選べたが、結果的にすべての学校が「音あり」を選択。応援曲が流れる中での試合を望む選手が多いということを、改めて感じた。
音源は、アルプス席上段のスピーカーと、内野席にあるアルプス席寄りのスピーカーから流し、テレビで見ている分にはとても自然で、まったく違和感がない。現地観戦した知人も、「いつもの雰囲気とほとんど変わらない」という。あまりのリアルさに、生演奏と勘違いしている人も多かったが、これは「アルプス席では大太鼓1台までOK」というルールにより、スピーカーからの音源に合わせて野球部が力いっぱい「ドンドン!」とたたいていたこともあり、さらなる臨場感を生み出していたからかもしれない。