甲子園の風BACK NUMBER
“史上最弱”でも「決勝で勝てなかったのは本当にダメ」 明豊の主将が悔しがった理由【無失策でセンバツ準優勝も】
posted2021/04/02 06:01
text by
間淳Jun Aida
photograph by
KYODO
三塁ランナーを還したらゲームセット。明豊の内野は前進守備を敷いた。センバツ決勝、9回1アウト満塁。東海大相模の3番・小島大河が放った低いライナーが、ショート幸修也を襲う。打球はグラブを弾いて、センターへ転がった。
「自分の甘さが最後のプレーに出てしまい、投手を助けられなかったのは本当に悔いが残りました。捕れる打球だったので。泥臭くやろうと思ってやってきたが、最後に甘さが出てまだまだだと思います」
電光掲示板には「H」が表示される。2-3でサヨナラ負け。幸は目元をぬぐいながら整列に向かった。
「自分が今まで見てきた中で一番弱い」に奮起
「自分が今まで見てきた中で一番弱い」
川崎絢平監督の、この言葉から新チームはスタートした。
主将の幸は「あの言葉がなかったら、甲子園に来ることはできなかった」と振り返る。絶対的なエースはいない。今大会でも、打線の中心となる1番や4番を固定せず、試合ごとに打線を組み替えた。スター選手はいなくても、決勝の舞台にたどり着いた。
明豊の象徴といえる堅い守り。それは、最後まで変わらなかった。決勝までの5試合で一度も、甲子園の電光掲示板に「E」が点灯することはなかった。昨秋の大会でも8試合で、エラーはわずか1つ。記録に残るミスが少ないのはもちろん、数字に表れない守備力が甲子園の決勝でも光った。
4回ノーアウト一塁。東海大相模はヒットエンドランを仕掛けた場面だ。
3番・小島の打球はライトへのライナー。捕球した明豊のライト山本晃也は、一塁ランナーが飛び出していたため一塁へ送球する。しかしこれが一塁手の頭を越える悪送球となる。チーム初のエラーが記録され、ピンチが広がるかと思われた。
だが、送球が逸れることも想定していた投手の太田虎次朗がカバー。一塁に送球し、ダブルプレーを取ったのだ。