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羽生善治と“藤井聡太の師匠”杉本昌隆が降級…順位戦衝撃の結末、さらに元A級棋士の懸念は三段リーグの異常性「昇段倍率が競争原理を超えている」
posted2025/03/27 06:01

会長職と兼務する羽生善治九段は、来期順位戦をB級2組で戦うのか
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Nanae Suzuki
2024年度順位戦の全日程が3月中旬に終了した。A級プレーオフに勝って名人戦に初挑戦する永瀬拓矢九段、B級1組からC級2組までの各クラスで昇級した棋士の成績やエピソードなどを、田丸昇九段が解説する。その一方で降級した棋士もいて、順位戦ならではの明暗に分かれた。また、2024年度に晴れて棋士になった4人の新四段も紹介する。【棋士の公式戦記録は3月20日時点】
佐藤天彦とのプレーオフを制し永瀬が名人挑戦
【A級】
最終戦(2月27日)を迎えた時点で、1位は6勝2敗の佐藤天彦九段(37)。佐藤は居飛車党だったが、2年前から振り飛車を用いて好成績を収めている。大師匠の大山康晴十五世名人を思わせる粘り強い指し方に特徴があった。佐々木勇気八段(30)に勝てば、2019年以来となる6年ぶりの名人戦登場を自力で掴み取れる。二番手は5勝3敗の永瀬拓矢九段(32)、A級1年目の増田康宏八段(27)。両者は最終戦で対戦し、佐藤九段が敗れた場合、勝者はプレーオフに進出する状況だった。
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永瀬−増田戦は永瀬が勝った。それから1時間後、佐々木が佐藤に勝った。その結果、3月4日に永瀬−佐藤のプレーオフが行われた。振り飛車を用いた佐藤は、中盤で角打ちの強手で迫ったが、寄せにいくことを逡巡して攻守が入れ替わった。そして永瀬が激闘の末に勝ち、藤井聡太名人(22=竜王・王位・王座・棋王・王将・棋聖を合わせて七冠)への挑戦者になった。
名人戦に初登場となる永瀬九段は、「藤井さんと9時間の持ち時間で指せる機会ができたのは、自分にとってプラス」と語った。名人戦第1局は4月9、10日に東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で行われる。
A級の地位は一流棋士のステータスで、在籍することに大きな価値がある。今期は前半で4連敗した菅井竜也八段(32)と稲葉陽八段(36)が、ともに3勝6敗で降級が決まった。A級在籍が通算8期の稲葉と同じく5期の菅井は、来期に復帰を目指す。
渡辺明九段(40)は後半で、足の負傷の影響から中盤で投了する事態となって休場・手術を挟んで2連敗したが、手術後の対局に2連勝して5勝4敗で終えた。
レジェンド羽生が“34年ぶりB級2組”へ降級の衝撃
【B級1組】
A級への昇級者は、9勝3敗の近藤誠也八段(28)、糸谷哲郎八段(36)。両者は最終戦(3月6日)の2カ月前の11回戦で昇級をすでに決めていた。
近藤八段は2016年度の順位戦に初参加すると、4期目にB級1組に昇級した。18年度のC級1組では藤井七段(当時)に勝ち、順位戦での初黒星を付けるとともに連続昇級を阻んだ。棋士10年目の今年、目標とした20代でA級昇級を果たした。2月には朝日杯将棋オープン戦で棋戦初優勝し、昇級に花を添えた。