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【投手編】プロ野球・出身高校別2020年成績ランキング調べました…肩肘を温存!? 大分商や西条など公立校出身が活躍中
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySankei Shimbun/Nanae Suzuki
posted2021/04/01 17:00
東海大相模時代と巨人時代の菅野智之
公立校がトップ10のうち半数を占めている
勝利数では、神奈川県勢の東海大相模と横浜が17勝でトップ。東海大相模は菅野智之、横浜は涌井秀章とセ・パ両リーグの最多勝を擁していることが大きい。横浜には西武の松坂大輔もいるが、昨年は一軍出場はなし。この数字には松坂大輔の存在は反映されていない。
4位の大分商は昨年、セの新人王の森下暢仁が登場したことが大きい。
打撃成績では、圧倒的に私学が上位に来るが、投手では、大分県立大分商、愛媛県立西条、東京都立総合工科、三重県立菰野、愛知県立蒲郡と、公立高校が11校中5校を占めている。
今の高校野球では甲子園出場は、圧倒的に私学が有利だが、地方大会や甲子園で投げぬいたエースが、故障したりパフォーマンスが低下することも多い。甲子園にはあまり出場しない公立高校で肩肘を温存した投手が、プロ入り後、活躍するというケースが結構見られるのだ。
<奪三振数の高校別ランキング>
横浜(神奈川県)198三振/涌井秀章(楽)110三振、柳裕也(中)88三振
広陵(広島県)192三振/有原航平(日)106三振、野村祐輔(広)35三振
大分商(大分県)191三振/森下暢仁(広)124三振、笠谷俊介(ソ)67三振
東海大相模(神奈川県)180三振/菅野智之(巨)131三振、吉田凌(オ)33三振
佐野日大(栃木県)163三振/田嶋大樹(オ)89三振、澤村拓一(巨、ロ)40三振
蒲郡(愛知県)149三振/千賀滉大(ソ)149三振
都城(宮崎県)149三振/山本由伸(オ)149三振
京都外大西(京都府)148三振/大野雄大(中)148三振
岡山理大付(岡山県)139三振/九里亜蓮(広)106三振、薮田和樹(広)33三振
浦和学院(埼玉県)130三振/小島和哉(ロ)83三振、榊原翼(オ)31三振
奪三振は本格派投手の指標だ。上位には現在のNPBを代表する先発投手を擁する高校が並んでいる。佐野日大は、今季からMLBレッドソックスの澤村拓一が巨人、ロッテで34.1回を投げて40奪三振を挙げている。
蒲郡の千賀滉大、都城の山本由伸、京都外大西の大野雄大は1人で全奪三振を挙げている。
なお大阪桐蔭(大阪府)は、藤浪晋太郎(神)85三振、澤田圭佑(オ)24三振などの126三振で11位だった。
救援投手を見てみると、さらに“公立校優位”
<セーブ数とホールド数の合計の数値の高校別ランキング>
帝京(東京都)44 (6S 38H)/清水昇(ヤ)0S 30H、山崎康晃(De)6S 8H
海部(徳島県)38 (32S 6H)/森唯斗(ソ)32S 6H
市和歌山商(和歌山県)36 (31S 5H)/ 益田直也(ロ)31S 5H
柳学園(兵庫県)34 (33S 1H)/増田達至(西)33S 1H
八重山商工(沖縄県)34 (1S 33H)/平良海馬(西) 1S 33H、大嶺祐太(ロ)0S 0H
市立尼崎(兵庫県)29 (8S 21H)/宮西尚生(日)8S 21H
神戸西(兵庫県)27 (2S 25H)/福敬登(中)2S 25H
広島工(広島県)25(0S 25H)/石田健大(De)0S 25H
金足農(秋田県)24 (20S 4H)/石山泰稚(ヤ)20S 4H、吉田輝星(日)0S 0H
静清工(静岡県)24 (2S 22H)/牧田和久(楽)2S 22H
ガラッと顔触れが変わる。1位は帝京。一昨年までなら日本代表のクローザーでもあったDeNAの山崎康晃の名前がトップに来るが、昨年最多ホールドを取ったヤクルトの清水昇が登場、不振だった山崎は影が薄くなっている。
2位以下では1人の投手が記録した高校が非常に多い。エリートが多い先発投手とは異なり、救援投手はアマチュア時代実績がなくても、プロに入ってから進化して台頭する投手が多い。
また徳島県立海部、沖縄県立八重山商工、和歌山市立和歌山商(現・市立和歌山)、尼崎市立尼崎、神戸市立神戸西(現在は閉校)、広島県立広島工、秋田県立金足農とベスト10のうち7校が公立高校。救援投手は先発以上に公立高校の比率が高い。