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田口麗斗⇔廣岡大志、活躍するのはどっち? 過去の大型トレードを振り返ると…【張本・落合・秋山・糸井・大田】
posted2021/03/04 11:03
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Sankei Shimbun
プロ野球のトレード話というのは、だいたい突然勃発する。そして野球ファンを「え?」と驚かせるものだ。
巨人の田口麗斗とヤクルトの廣岡大志のトレードも3月早々、私たちを「え?」と言わせた。でもこの「え?」は、プロ野球のストーブリーグのだいご味でもあったのだ。
昭和の昔、オフには大型トレードがしばしばあった。中には「あの選手は放出されるのではないか?」とスポーツ紙上をにぎわせた挙句に移籍した選手もいたが、何の前触れもなくトレードに出される選手もいた。
選手にとってトレードはあまり良いものではないようで、MLBでは契約時に「トレード禁止条項」を加えたりする選手もいる。
しかし野球ファンにとって「トレード」は、いろいろな感慨を抱かせるものだ。サラリーマン社会では「転勤」や「配置転換」などがしばしばある。辞令1枚で生活が一変することがあるが、トレードはそれを想起させて、身につまされるものだったのだ。
山内一弘と小山正明の「世紀のトレード」
せっかくなので、球史に残るトレードの主な「収支」を見ていこう。今から考えると、どっちの球団が「得」をしたのか、いろいろ興味深い。いずれも移籍先に限定した通算記録である。
〇1963年オフ 大毎・山内一弘31歳⇔阪神・小山正明29歳
山内一弘(阪神/4年)487安打87本塁打276打点 打率.258
小山正明(東京・ロッテ/9年)140勝92敗2088.1回 防御率2.73
「世紀の大トレード」と言われた。山内は中西太、野村克也らと「パ・リーグの最強打者」の座を争う強打者。小山は村山実とともに阪神のWエースの1人である。
今でいえば――“ソフトバンク・柳田悠岐と中日・大野雄大のトレード成立”とたとえていいくらいのインパクトだ。
小山は大毎から東京オリオンズと改称した移籍1年目にキャリアハイの30勝、山内も31本塁打を放って阪神優勝に貢献したが、小山が投手陣の柱として長く活躍したのに対し、山内は次第にパワーダウンして広島に移籍した。