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大変だった春季キャンプ、“14度目”の中田翔が「今年は本当にきつかったわ」と漏らした理由【広報は見た】

posted2021/03/04 11:01

 
大変だった春季キャンプ、“14度目”の中田翔が「今年は本当にきつかったわ」と漏らした理由【広報は見た】<Number Web> photograph by Kyodo News

練習試合で本塁打を放った中田をグータッチで迎える栗山監督。日本ハムは1日、沖縄・名護で行った春季キャンプを打ち上げた

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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 厳かに、最後の1日を迎えた。小さな幸せと、大きな達成感があった。同じ時間を共有した皆が、同じだったと思う。

 3月1日、午前10時30分。タピックスタジアム名護のマウンドに、選手会長の近藤健介選手が立った。栗山英樹監督らコーチ陣、選手、裏方スタッフらが取り囲むように輪を作る。近藤選手の約1分のスピーチから、一本締め。例年なら握手でねぎらい合うが、今年はグータッチだった。スタンドにもファンがいるが、立ち入りできるのは報道陣のみ。静粛な節目となったのである。

 北海道日本ハムファイターズの2021年の春季キャンプが終わった。

 誰もが、未経験の1カ月だった。目に見えない新型コロナウイルスと格闘し続けた。手探りだった。1月30日に一軍、ファームともに沖縄入り。那覇空港に手配された大型バス4台で、本島北部の一軍の名護市、ファームの国頭村へとそれぞれ分かれて向かった。スタートから、毎年とは違った光景が広がっていた。バスの車内の窓は空気循環、換気のため全開。乗車口には、消毒液が設置されていた。

 名護まで約1時間、国頭村まで約1時間30分。マネジャーが密にならないように計算し、座席数も余裕があり、潤沢だった。もちろんマスク着用は厳守で、旧交を温めるような談笑の声も聞こえてこなかった。

 感染しない、感染予防を徹底する。そして仮に感染したとしても拡大源にならない――。

 当時、猛威をふるっていたウイルスを警戒する一人、一人の強い意志表示は、車中の静寂の中に満ちていた。キャンプ地に先乗りしていた選手らを含め、来日できていない外国人選手を除いて、全員が南国に集結したのである。

毎週木曜のPCR検査「全員陰性です!」

 翌1月31日、キャンプインに備えて全員一斉のPCR検査が実施された。これが第1回目だった。その日からキャンプ期間中は毎週木曜日に、検査が行われた。私、広報も含めてチーム宿舎を利用するスタッフは必須だった。トレーナー陣が毎回唾液の検体を回収して、その結果を集約する。検体回収日には早朝から朝食会場の前で、複数人で待機。回収漏れ、不備がないかなど、くまなくチェックして最後まで乗り切った。その準備に相当な労力を費やし、心血を注いだであろうトレーナー陣の姿には敬服するしかなかった。

 選手らを含めた全員の連絡網がある。そこに統括しているトレーナーから都度、検査結果の報告がある。短いメッセージに、安堵がにじむ。

「PCR検査、名護、国頭、全員陰性です!」

 いつも控えめなベテランのトレーナーが語尾に付けてくる「!」に、その作業の辛苦を思うのである。またそれが報われたことに、少しだけこちらもうれしくなってしまった。

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