酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
田口麗斗⇔廣岡大志、活躍するのはどっち? 過去の大型トレードを振り返ると…【張本・落合・秋山・糸井・大田】
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/04 11:03
お互いの健闘を称えてグータッチする田口麗斗と廣岡大志。巨人とヤクルトの有望株とされていた2人の電撃トレードは、どんな結果をもたらすか
大杉、張本ら名打者もトレード経験者
〇1974年オフ 日本ハム・大杉勝男29歳⇔ヤクルト・内田順三27歳、小田義人27歳
大杉勝男(ヤクルト/9年)1057安打199本塁打688打点 打率.294
内田順三(日本ハム/2年)146安打7本塁打44打点 打率.251
小田義人(日本ハム/3年)360安打34本塁打137打点 打率.288
前年オフに日拓から球団を買収した日本ハムは、チームカラーを一新するため大物選手を放出した。ヤクルトに移籍した大杉は不動の4番として活躍し、史上初の「2チーム1000本安打」を記録。1978年のヤクルト初優勝は大杉の存在なくして考えられなかった。
一方で内田、小田と有望な若手打者を獲得した日本ハムだが、小田は移籍1年目に打率2位になるなど活躍したものの、ともに短期間で他チームに移籍した。
〇1975年オフ 日本ハム・張本勲35歳⇔巨人・高橋一三29歳、富田勝29歳
張本勲(巨人/4年)526安打75本塁打280打点 打率.328
高橋一三(日本ハム/8年)57勝54敗12SV 1011.1回 防御率3.73
富田勝(日本ハム/5年)560安打47本塁打227打点 打率.286
首位打者7回、史上最高の安打製造機と言われた張本は、就任1年目に最下位に転落した長嶋巨人に所望されてトレード。日本ハムは大杉に続いて、日拓前の東映カラーが強い大物を放出した。巨人ファンの中には堀内恒夫と並ぶ左のエース高橋一のトレードにショックを受けた人も多かった。
張本は移籍1年目に中日の谷沢健一と激しい首位打者争いをするなど「さすが」の大活躍を見せた。
一方、高橋一は2ケタ勝利こそ2度だったが貴重な先発左腕として長く活躍。“長嶋の後継者”と言われながらトレードされた富田も3割を2回記録した。
小林繁⇔江川は“誰も得しなかった”?
〇1979年2月 巨人・小林繁26歳⇔阪神・江川卓23歳
小林繁(阪神/5年)77勝56敗4SV 1156.1回 防御率3.23
江川卓(巨人/9年)135勝72敗3SV 1857.1回 防御率3.02
「空白の一日」で江川との契約を発表した巨人だったが、金子鋭コミッショナーは認めず。1978年のドラフトで江川は阪神が1位指名したが、翌年1月末、金子コミッショナーの裁定で、江川の巨人へのトレード移籍が決まる。阪神がトレード相手に指名したのはエースの小林繁。1月31日に宮崎キャンプに向かうため羽田空港にいた小林が呼び戻され、その日深夜にトレードが成立した。
小林繁は移籍1年目22勝で最多勝と気を吐いたが、5年目に13勝を挙げながら31歳で現役引退。江川も1981年にMVPに輝くなどエースとして活躍したが、32歳で引退した。実績的には十分とはいえ、このトレードは「誰も得しなかった」のかもしれない。