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【セパ格差を記録で考える】先発重視の投手起用は“時代遅れ”か 救援防御率と見比べると、ある傾向が
 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byNanae Suzuki

posted2021/01/25 11:02

【セパ格差を記録で考える】先発重視の投手起用は“時代遅れ”か 救援防御率と見比べると、ある傾向が<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

巨人は2020年先発防御率がリーグ1位の一方で、救援防御率は3位だった

<2011年以降のセ・パ両リーグの完投数の推移>
 2011年 セ61完投 パ107完投
 2012年 セ54完投 パ77完投
 2013年 セ47完投 パ58完投
 2014年 セ47完投 パ53完投
 2015年 セ49完投 パ46完投
 2016年 セ47完投 パ46完投
 2017年 セ34完投 パ57完投
 2018年 セ43完投 パ42完投
 2019年 セ30完投 パ19完投
 2020年 セ36完投 パ19完投

 10年前はパ・リーグの方が完投数が多かったのが、次第に拮抗。2018年には逆転し、2020年には大きな差となっている。

ダルビッシュ、田中、大谷らのMLB移籍によって

 DH制を導入したリーグの方が「先発重視」になると言われる。投手が打戦に並ばないことで、代打で交代というケースがなくなり、先発がより長く投げることができるからだ。事実、DH制が導入されて以降、パ・リーグでは先発完投型のエースが次々と登場した。21世紀に入ってもパ・リーグからは本格派のエースが次々と登場した。

 しかし2007年に西武の松坂大輔、2012年に日本ハムのダルビッシュ有、2014年に楽天の田中将大、2018年に日本ハムの大谷翔平、2019年には西武の菊池雄星とパのエースは次々とMLBに移籍した。また2012年にはソフトバンクの杉内俊哉が巨人に、2019年にはオリックスの西勇輝が阪神と、セ・リーグへの移籍もあった。

 先発完投能力の高いエースの人材流出が続く中で、パ・リーグの投手起用は方針転換をせざるを得なくなったのだ。

浅尾、藤川ら名セットアッパーもいただけに

 「野球は先発完投が基本」という野球人は年配者を中心に多い。ただ「先発重視より救援重視の方が勝てている」というファクトに注目すべきだろう。

 他のスポーツも同様だが、野球というスポーツも「生き物」であり、日々変化している。その変化にいち早く対応し、自らを変革できるチーム、リーグが勝利を収めているのだ。

 とはいえ、セ・リーグはもともと救援投手起用では先進的だった。セットアッパーで初めてMVPを受賞した浅尾拓也、絶対的なクローザーだった藤川球児など、球史に残る救援投手を何人も輩出している。

 それを考えれば、救援投手に軸足を移すことは不可能ではないだろう。今までの投手用兵を今一度見直してはどうだろうか?

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