酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
【セパ格差を記録で考える】先発重視の投手起用は“時代遅れ”か 救援防御率と見比べると、ある傾向が
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2021/01/25 11:02
巨人は2020年先発防御率がリーグ1位の一方で、救援防御率は3位だった
先発、救援別の勝利数を比率で表すとこうなる。
パ・リーグ 先発69.5% 救援30.5%
セ・リーグ 先発72.9% 救援27.1%
一方で完投数と単独の投手による完封数、そしてセーブ数、ホールド数は下記の通り。
パ・リーグ 完投19 完封9
セ・リーグ 完投36 完封16
パ・リーグ 175セーブ 558ホールド
セ・リーグ 154セーブ 518ホールド
セ・リーグは昔ながらの「先発完投」こそが野球の王道だとして、エースを中心とした投手陣でペナントレースを戦っている。一方でパ・リーグは、数字で見る限りだと先発投手は端的に言えば「最初に投げる投手」くらいのイメージで、複数の救援投手をフル回転させてペナントレースを戦い始めている印象を受ける。
どちらも野球の方法論ではある。ただ、筆者はこの方針の違いが“セパ格差”の一因となった可能性があるのでは――と感じる。
セ・パの先発投手へのアプローチ差
セ・リーグの先発投手には「完投」への期待感がある。
アメリカで先発投手の最低限の責任とされるQS(先発して6回を投げて自責点3以下)では、合格点は与えられない。沢村賞の堀内恒夫選考委員長は“MLBのQSは日本野球では軽すぎる”として、7回以上自責点3以下という「沢村賞基準のQS」を新設したが、セでは「先発投手は完投して一人前」という意識が今もなお強いはずだ。
これに対してパ・リーグは「試合を作ってくれれば合格点」、先発完投は「できるチャンスがあれば」というアプローチが確立された印象だ。投手自身も「6回まではしっかり投げよう」という意識で投げる。救援投手につなぐのが当たり前という認識なのだろう。
救援投手に対する認識も異なっている。