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巨人が失敗した情報伝達のやり方。
広島戦3連敗と30年前西武に4連敗。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/08/28 11:50
「データが入れば入るほどに相手が大きくなってしまった」と振り返った槙原(左)。デストラーデ(右)らを擁する強力な西武打線に捕まった。
30年前、巨人は情報伝達に失敗した。
そう考える元には巨人に残る1つの教訓があるからだ。
その教訓とはいまからちょうど30年前、原監督も宮本和知投手チーフコーチも現役バリバリの頃の、ある情報伝達の失敗である。
この年は藤田元司監督が監督復帰して2年目のシーズンだった。
開幕前には桑田真澄投手が前科のあるメンバースクラブの社長から、金銭等を授受していたことが発覚。球団から1カ月の謹慎処分を受けるなど波乱のスタートだった。
しかしチームは開幕直後から快調に飛ばして5月8日には謹慎明けの桑田が、首位争いをしていた大洋に完封勝利。そこから独走体制を固めて9月8日には、左膝の靭帯断裂から奇跡の復活を遂げた吉村禎章外野手のサヨナラアーチでヤクルトを破ってリーグ優勝を決めた。
秋山、清原、デストラーデと強打者が揃う。
チームを支えたのは連続20勝を達成したエースの斎藤雅樹投手を軸にした投手陣だった。この年は桑田も宮本と共に14勝をマークし、木田優夫投手が12勝、香田勲男投手が11勝して1チームから2桁勝利投手を5人(ちなみに槙原寛己投手は2桁に1勝届かない9勝)も輩出した。
そうして早々にリーグ優勝を決めた巨人と日本シリーズで激突したのが、この頃、まさに黄金期を迎えていた西武だったのである。
この年の西武は清原和博内野手が37本塁打、秋山幸二外野手が35本塁打、オレステス・デストラーデ内野手が42本塁打と中軸にパワーヒッターを揃える打線が売りのチーム。
しかも中軸だけでなく石毛宏典に辻発彦、田辺徳雄と曲者揃いの内野陣に、捕手の伊東勤と役者が揃った強力チームだった。
この西武打線を巨人の投手陣がどう抑えるか。シリーズの焦点はそこに絞られていったのである。